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H5N1鳥インフルエンザ:重要な出来事の時系列表

 2004年2月12日 WHO(原文

 



− 首都ソウル(Seoul)近郊の陰城(Eumsung)地区(忠清北道陰城郡三成面:チュンチョンブクト・ウンソングン・サンソンミョン)の農場での鶏の突然死は、大韓民国(韓国)における高病原性鳥インフルエンザの流行の疑いを起こさせた。検査が実施された。農場の24,000羽の鶏のうち19,000羽が、12月5日から11日の間に死亡した。残りの5,000羽は処分された。

2003年12月17日
− 韓国当局は、H5N1型のウイルス株によって養鶏場で発生した、高病原性鳥インフルエンザの流行を公式に報告した。韓国国内で高病原性鳥インフルエンザが報告されたのは、今回がまったくはじめてである。感染した鶏と密接な接触のあった農夫の間からの発症報告はなかった。

12月26日
− 韓国当局は、5つの道(ドウ:province)の鶏とアヒルの農場へH5N1感染が広がったことを報告した。合計で、130万羽の鶏とアヒルが死亡するか、処分された。

2004年 1月5日
− ベトナムの保健当局からハノイ(Hanoi)のWHO事務所に、ハノイに入院中の従来健康であった11人の子供達の間で、重症呼吸器疾患の集団発生が起こったとの情報が寄せられた。最後の例は1月4日に入院していた。7症例は死亡しており、2症例は危篤状態であった。12例目の症例は、省立の病院において呼吸器疾患で死亡したが、ハノイの症例の内のひとりの兄弟であった。
− この報告に含まれていたのは、9ヵ月から12歳までの6人の小児で、2003年10月31日と12月30日の間にハノイの病院で原因不明の呼吸器疾患で死亡している。最初の5例については、解析に必要な検体を入手することはできなかった。6番目の症例である、12月27日に入院し、3日後に死亡した12歳の女児については、検体を入手することができた。これらの症例はすべて病院記録に基づき、過去に遡って特定された。
− すべての事例が同じ病原体によるものであるかどうかは、分かっていない。病原体は分かっていなかったが、インフルエンザウイルスか、アデノウイルスであると考えられていた。検査の手配がなされた。
− 集団発生への対応にWHOの支援が依頼された。WHO本部とマニラの地域事務所に急が告げられた。

1月6日

− 報道機関の一員により、ベトナム南部での鶏の死亡の噂が、ハノイのWHO事務所に告げられた。マニラの地域事務所に報告された。

1月7日
− WHOによって、電子広報されているOVL(Outbreak Verification List:集団発生情報の提供リスト)を通じて、世界中の公衆衛生担当者に情報提供された。

1月8日
− ベトナムの当局筋が、H5亜型(後にH5N1型の株と確認された)高病原性鳥インフルエンザによって引き起こされた、南部の省のロンアン(Long An)の2農場とティエンザン(Tien Giang)の1農場での集団発生を報告した。およそ70,000羽の鳥が死亡あるいは処分された。ベトナム国内で高病原性鳥インフルエンザが報告されたのは、今回が始めてである。

1月11日
− 1月5日の報告以来、ベトナム政府筋はさらに2例の重症呼吸器疾患例(小児もう1例と成人1例)を特定し、10月末以来ハノイの病院で合計13例となった。
− ベトナムの2例の死亡例(12歳の女児と10歳の男児)から取られた検体の検査が、香港の国立インフルエンザセンター(National Influenza Centre)で行われ、H5N1型トリ・インフルエンザウイルス株による感染を確認した。
− WHOはGOARN(Global Outbreak Alert and Response Network:世界的な集団発生事例に対する警戒と対応のためのネットワーク)参加国へ警報を発した。

1月12日
− 香港の国立インフルエンザセンターは、ベトナムの3例目の死亡例となった、12歳女児の30歳の母親のH5N1感染を確認した。
− ベトナムの保健当局とWHOは、鳥のH5N1がヒトに感染したこれら3症例を、検査により確認したことを発表した。
− これら3例の感染確定により、H5N1型のウイルス株が、鳥類の宿主から種を超えてヒトに感染した、近年で3回目の事例を確認した。以前のヒトへの感染は、1997年に香港(18症例で、うち6例が死亡)で、2003年2月に再度香港(2症例で、うち1例が死亡)で起こった。1997年の集団発生は、香港の家禽農場と生きた動物を扱う市場(live market)での高病原性H5N1鳥インフルエンザの発生と同時に起こった。2003年の2例は、中国南部へ旅行後に、香港へ戻っていた。
− 日本当局は、山口県の農場で発生した、H5N1型のウイルス株による高病原性鳥インフルエンザの集団発生を報告した。これは1925年以降で初めての、高病原性鳥インフルエンザの報告である。

1月13日
− 韓国当局は、さらにもうひとつの農場へH5N1感染が広がったことを報告し、流行が制御されたという望みを粉々に打ち砕いた。この日までに、約160万羽の鳥が死亡あるいは処分された。
− ベトナムでの死亡例のうちの1例から得られたウイルスのシークエンス(塩基配列)から、すべての塩基配列がトリ・インフルエンザウイルス由来であることが明らかになった。

1月14日
− WHOはGOARNに対して、ベトナム保健当局とハノイのWHO事務所を支援する専門家の特定に関して、緊急の支援要請を出した。当面の目的は、鳥からヒトへの感染伝播のリスクを減らすことと、保健当局の疫学的調査とヒト症例の封じ込めを支援することであった。検査診断の能力の拡充と、院内感染制御対策への助言、ヒト症例のサーベイランス強化の専門的知識も必要とされた。

1月15日
− ベトナムで4例目のH5N1によるヒト感染例が確認された。ハノイで入院したこの4例はすべて死亡した。

1月19日
− 5例目のH5N1死亡例が、やはりベトナムのハノイで確認された。
− 香港のある宅地造成地の近くで、一羽のハヤブサが死んでいるのが発見された。直ちに検査が行われた。2日後に、この鳥から採取された検体からH5N1が確認された。
− WHOのスタッフとGOARN国際チームがベトナムに到着。チームの成員は、米国疾病対策予防センター(CDC)、欧州委員会(フランスのDGAL − Ministere de l'agriculture, de l'alimentation, de la peche et des affaires rurales)、EPIET(欧州実地疫学家コース:European Programme for Intervention Epidemiology Training)ネットワーク、英国保健予防機関(Health Protection Agency)、フランス衛生研究所(IVS:Institut de Vielle Sanitaire)、フランスのパスツール研究所ネットワーク(IPN:Institut Pasteur Network)、スエーデンの感染症対策研究所(SMI:Swedish Institute for Infectious Disease Control)、日本の国立感染症研究所(National Institute of Infectious Diseases)、オランダの公衆衛生および環境研究所(RIVM:Rijksinstituut voor Volksgezondheid en Milieu)、ドイツのロベルト・コッホ研究所(Robert Koch Institute)から選ばれた。

1月20日
− WHOの世界インフルエンザ・サーベイランスネットワークに属する研究施設は、ヒトのH5N1ワクチンの開発に必要な研究を加速した。

1月22日
− ネットワークに属する研究施設は、現在のヒトおよび家禽類での集団発生にかかわるH5N1ウイルスは、1997年と2003年の香港での集団発生に関与したH5N1ウイルスとは著しく異なっており、このウイルスが突然変異を起こしたことを示唆していると結論づけた。

1月23日
− タイ関係当局は、スパンブリー県(Suphanburi Province)のひとつの農場で、H5N1型のウイルス株によって、高病原性鳥インフルエンザの集団発生が引き起こされたことを報告した。タイの国内で、高病原性鳥インフルエンザが報告されたのは、今回が初めてである。7万羽近い鳥が死んだか、処分された。日本、EU(欧州連合)、および他の主な輸出相手国は、直ちにタイからの家禽類製品の輸入をすべて禁止した。
− タイ公衆衛生省はWHOへ、検査により確定した2例の、ヒトでのH5N1感染例について報告した。これらの症例は、スパンブリー県とカンチャナブリー県(Kanchanburi Province)の小さな男児であった。(この時点では)ふたりとも生存していた。
− インフルエンザネットワークの研究施設は、ベトナムでヒトから分離されたH5N1ウイルスは、抗ウイルス薬の一方の種類、M2タンパク阻害剤のアマンタジン(amantadine)とリマンタジン(rimantadine)に耐性があると報告した。

1月24日
− ベトナムはさらに、ホーチミン市(Ho Chi Minh City)の病院に入院していた、2例の小児のH5N1感染症例を報告した。これらは、初めての南部からの症例であった。ひとりは死亡し、2人目は依然危篤状態で入院している。これでベトナムからの報告は7症例を数え、うち6例が死亡している。
− ベトナムは家禽類での集団発生が、国内64省の内23省へ広がったと報告した。300万羽に近い鶏が死んだか、あるいは処分された。
− カンボジアは、プノンペン(Phnom Penh)近郊のひとつの農場で、H5N1が鶏から見つかったと報告した。

1月25日
− WHO職員とGOARN国際チームは、カナダ保健省の支援のもと、タイに到着した。

1月26日
− タイ当局は、国内3例目になる、小さな子供の症例が検査により確認されたことを報告した。先に確定された症例の内一方が死亡した*。
*カンチャナブリー県の6歳の男児が1月25日に死亡

1月27日
− 1月26日に報告された、タイの3例目の症例が死亡した*。(この時点では)報告された3例中、ひとりが生存していた。
*スコタイ県(Sukhothai Province)の6歳の男児
− ベトナムは8例目の症例を報告した。この子供は完全に回復し、退院した。
− 中国衛生部は、南部の広西壮族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)のアヒル農場の家禽類の間で、高病原性H5N1型鳥インフルエンザが広がっていることを確認した。
− ラオスは首都ビエンチャン(Vientiane)近郊のひとつの農場での、家禽類の死亡を報告した。この報告は、3,000羽の群れの、2,700羽のメンドリが死んだと述べている。初期の検査でH5亜型が特定された。H5N1に付いての検査の手配がなされた。
− カンボジアはプノンペン近郊の農場のガチョウから、インフルエンザAの陽性結果が得られたと報告した。

1月28日
− パキスタンは、高病原性鳥インフルエンザの集団発生を報告した。検査によりH7亜型が検出された。報告では、170万羽のメンドリが死んだか、あるいは処分されたと述べている。

1月30日
− 中国当局は、さらに湖南(Hunan)省と湖北(Hubei)省の、ふたつの省の農場の家禽類でもH5N1感染を確認した。安徽(Anhui)省と広東(Guangdong)省、そして上海(Shanghai)直轄市での集団発生の疑いも報告された。

2月1日
− ベトナムはさらに2症例を確認した。これらは姉妹で、23歳と30歳であったが、双方とも死亡した。国内からの10症例中、8例が死亡し、1例が回復し、そして1例が依然入院中であった。

2月2日
− タイが4例目のH5N1感染の確定症例を報告した。症例は、58歳のスパンブリー県の女性で、1月27日に死亡した。国内からの4症例中3例が死亡した。
− 中国当局はこの時点で、中国本土31省/自治区/ 直轄市のうちの10カ所で、H5N1感染が確定あるいは疑われたことを報告した。
− WHOは、ベトナムのタイビン省(Thai Binh province)における、一家族内のクラスター(患者集積)を調査していたが、感染家禽との接触や環境感染源との接触のような、これらの症例を説明する特定の出来事を明らかにすることができず、限定されたヒト−ヒト感染伝播がひとつの可能性のある説明であるとの結論に至った。
− インドネシアが、後にH5N1と確認された、家禽類における高病原性鳥インフルエンザの集団発生を報告した。同国内で高病原性鳥インフルエンザが報告されたのは、今回が初めてであった。

2月3日
− タイで、唯一生存していた1月23日に報告された症例が死亡した*。この日までにタイは4症例を報告したが、全例死亡した。
*スパンブリー県の6歳の男児
− ベトナムはさらに3症例を報告し、1例が死亡、全症例が若年成人であった。
− ベトナム当局は、国内の64省中52省で、家禽類がH5N1の影響を受けたと報告した。
− タイ当局は、(この時点で)7つの省で殺処分が続けられており、全国でおよそ2,690万羽の鶏が処分されたと推計した。合計で国内76省の内36省が、影響を受けた。
− インドネシアの家禽類での集団発生が、H5N1によって起こされたことが検査により確認された。1995年に、高病原性鳥インフルエンザが国内に存在していることが宣言されていた。

2月4日
− 中国当局は、さらにふたつの省*の農場の家禽類へ感染が広がったことを報告した。
*甘粛省と陜西省に広がり、全国31省・自治区・直轄市のうち12から報告となった
− ラオスのビエンチャンでは、18ある農場(アヒル農場一カ所を含む)のうち17カ所が、H5亜型の検査陽性であった。

2月5日
− ベトナムはさらに2例の若年成人の死亡例を報告した。
− タイは国内第5例目を確認した。患者は小児で、2月2日に死亡した。
− タイの国内76省のうち40省から家禽類におけるH5N1感染症が報告された。
− 韓国ではさらに、ソウルの南の牙山(Asan)にあるふたつの農場でH5N1感染を確認し、鳥での集団発生がまだ完全に制御されていないことが示唆された。

2月6日
− GOARNの国際チームがカンボジアに到着した。GOARNのチームはフランスの衛生研究所(IVS)とパスツール研究所ネットワーク(IPN)から選ばれた。
− 中国は家禽類でさらに感染が広がっていることを確認した。すべて合わせて、中国本土の31の行政区画のうち13の区画の農場で、H5N1感染が確認あるいは疑われた。
− ベトナムではこのとき、国内に64ある省のうち56が、家禽類のH5N1感染による影響を受けている。
− ベトナムの家族内クラスターでの、ヒト−ヒト感染の可能性の調査の一部として、ひとりの死亡した確定例から分離されたウイルスの全シークエンス(塩基配列)が調べられた。すべての塩基配列はトリ・インフルエンザウイルス由来であった。しかしながら、この発見は限定的ヒト−ヒト感染伝播の可能性を完全に否定するものではない。仮にそのようなことが起こっていたとしても、クラスターに含まれた家族の全員が死亡あるいは回復したことで、感染伝播の連鎖は完全に終息したと言える。

2月8日
− 米国当局は、デラウエア(Delaware)州のある農場で鳥インフルエンザの集団発生が起こったことを報告した。初期の検査で、H7亜型が検出された。H7亜型が高病原性であるかどうかを決定するための、詳細な検査の実施が手配された。12,000羽あまりの鳥が処分された。
− OIE(国際獣疫事務局)によると、中国のH5N1感染が確認された9つの農場で、約50万羽の鳥が殺処理された。

2月9日
− ベトナムはさらに2例の死亡例を含む、3症例を報告した。
− ベトナムとタイのヒト感染が報告された二ヵ国での合計症例数は、この時点で23症例であり、そのうち18例が死亡していた。
− ベトナムでは国内の64省のうち57省で、家禽類がH5N1感染の影響を受けていた。およそ2,700万羽が死んだか、または処分された。

2月10日
− 中国政府は天津直轄市のひとつの養鶏場で、H5N1集団発生の疑いがあることを報告した。他の省内での、報告されていた農場以外への感染の拡大も報告された。すべて合わせて、中国本土の31ある省レ 自治区レ 直轄市のうちの14にある39の農場で、H5N1感染が疑われるか、あるいは確認された。39農場での集団発生のうち、19事例がH5N1によって引き起こされたことが確認されている。
− デラウエア州の二つ目の農場で、鳥インフルエンザが検知された。72,000羽余りが処分された。日本、中国、ポーランド、マレーシア、シンガポール、韓国が、米国からの家禽類の輸入を禁止した。

2月11日
− ベトナムでのヒト−ヒト感染の可能性の調査において、家族内クラスターの姉妹のふたり目からの分離ウイルスの解析結果から、このウイルスがトリ・インフルエンザウイルス由来であり、ヒト・インフルエンザウイルスの塩基配列をまったく持っていないことが明らかになった。
− WHOは、H5N1感染のヒトおよび動物社会における広がりを監視するため、世界的サーベイランスのガイドラインを発表した。
− 中国においてH5N1集団発生が確認された農場の数が、19から23へ増加した。

2月12日
− タイは、第6番目の13歳の男児の症例*を確認した。
*チャイヤプーム県(Chaiyaphum province)の症例
− ベトナムはホーチミン市で入院し、死亡した19歳男性の、19例目の症例を確認した。
− このふたつの国で確定された症例の合計は併せて25例で、このうち19例が死亡している。
− WHOにより、New England Journal of Medicineへの正式な発表に先駆け、ベトナムの集団発生からの10症例の臨床および疫学情報が初めて公表された。

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(2004/2/16 掲載)