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WHOは鳥インフルエンザの集団発生に対して 迅速な対応を強く望む

 2004年7月9日 WPRO(原文

 



WHOは、新たに鳥インフルエンザによる影響を受けたアジア各国当局に対し、国際リファレンス研究施設で分析できるように、分離ウイルスを提供するように強く求めた。「今回のウイルスを詳しく調査し、我々が相手にしているのが、今年はじめの大きな集団発生から続くものであるのか、新たなA(H5N1)型の高病原性鳥インフルエンザウイルスであるのかを知る必要がある。この疑問への答えをえることは、対策指針の助けとなる」と、WHO西太平洋地域事務局長の尾身茂博士は述べた。

 

この2週間に、鳥インフルエンザの集団発生が、中国、タイ、ベトナムの家禽類で確認された。「もし、相互にウイルスを比較することができ、また、先の集団発生のウイルスとも比較できれば、現在何が起こっているのかよりよく分かると思われる」と、尾身博士は述べた。これまでに、感染拡大を阻止するために、数万羽ものニワトリやアヒルが殺処分された。これらの国々では、いままでのところヒトの感染は出ていない。

 

尾身氏は、感染が広がった国々は迅速にその脅威に立ち向かったが、依然として公衆衛生上の著しいリスクが残っていると述べた。「感染家禽へのヒトの接触は、ウイルスが種を超えてヒトへ感染する結果となりかねない。それは、我々が免疫を持たない、新たなインフルエンザウイルスを生み出しかねない。明らかに、インフルエンザのパンデミックの危険が残っている」と、彼は述べた。

 

WHOは、感染が広がった国々と、以前に集団発生があった国々に対し、動物およびヒトの強化サーベイランスや、ウイルス株の分析を含んだリスク評価活動を、緊急に実施するように強く求めている。この点についてWHOは、FAO(国連食糧農業機関)やOIE(国際獣疫事務局)などの農業当局と緊密に協力している。また、ヒトのサーベイランス強化のために、各国の保健当局とも連携を保っている。

 

最近、一流の学術誌上(Nature magazineと、the Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)に、ウイルスは以前に考えられていたより後半に広がり、また、より病原性が高いという報告が掲載され、[http://www.who.int/csr/don/2004_07_08/en/ 日本語訳)] ヒトの健康リスクについての懸念が高まった。「社会不安に陥る必要はないが、感染が広がる国々が、その知識を世界と共有することが極めて重要である」と、尾身博士は述べた。

 

最新疫学情報

 

中国: 7月6日に農業庁は、安徽省と上海市西部の農場での、鳥インフルエンザの集団発生をWHO北京事務所に伝えた。農業庁によれば、感染はおそらく、6月24日に始まり、4日後に検知された。哈爾浜(Harbin,黒竜江省)の国家鳥インフルエンザリファレンス研究所で行われた検体の検査結果では、ウイルスはH5N1型であった。

 

8,000羽以上のニワトリが感染死、あるいは殺処分され、直ちに感染農場から直径3km以内のすべてのニワトリの殺処分が開始された。地方当局者は後に、さらに直径8km以内の12万羽の鳥にワクチンが接種され、その地域に居住する人々の以降制限が出されたと報告した。近隣の?湖(Chaohu)市の生鮮・動物市場(wet market)での生きた家禽の取引は停止された。ヒトの感染例は報告されていない。

 

タイ: 当局は、バンコクの北方にある県での2つの集団発生をOIEに報告した。先ず7月3日に、アユタヤ県(Ayutthaya Province)のパッカイ地区(Pak Hai district)で23,500羽のニワトリが処分されたと報告された。4日後に隣県パトゥンタニ(Pathumthani Province)のムアング地区(Muang district)で、730羽のニワトリが処分された集団発生があったとOIEに報告した。いずれの事例でも、ウイルスはH5型と当局により確認された。保健省によれば、ウイルスの感染の有無について、アユタヤの農場の34人の労働者を密接に間接していたが、今までのところ何らかの症状を呈した者はいなかった。

 

ベトナム:ホーチミン(Ho Chi Minh)市の南、メコンデルタ地区のバックリュ県(Bac Lieu Province)の3つの農場での鳥インフルエンザの集団発生が、6月29日にFAOに報告された。7月5日に、ドンタップ県(Dong Thap Province)の集団発生も確認された。非公式筋によれば、南部の健康な家禽類の間でも、H5N1感染の頻度は高いといわれている。現在までのところ、ウイルスは公式にはH5とだけ確認された。

ベトナム保健省のSARSと鳥インフルエンザ運営委員会は7月8日に、WHOに対し、ホーチミン市にあるパスツール研究所が、感染が広がった地区の家禽に接触した人々80人の検体のPCR法による検査を実施したと報告した。検査結果は、地元の報道機関がヒトの疑い例と報道された4例を含み、すべて陰性であった。

7月2日の公式発表でベトナム動物保健省は、今回の集団発生が、前回の感染が起きた地域での不完全な消毒と、急ぎすぎた農場の再開によって引き起こされたかもしれないと示唆した。


さらに詳しい情報を希望する方は、Roy Wadia  (86−13−61−117−4072, email: wadiar@chn.wpro.who.int) までお問い合わせください。

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(2004/8/2 IDSC掲載)