国立感染症研究所 感染症情報センター
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コクシジオイデス症 コクシジオイデス症 (2005年第22号, 速報)



コクシジオイデス症は米国西南部(カリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州、ユタ州など)、メキシコ西部、アルゼンチンのパンパ地域、ベネズエラのファルコン州の半乾燥地帯などの風土病である。米国では最近、年間4,000〜6,000例が報告されているが、季節的には晩夏〜初秋に多いとされている。


原因となるのは真菌のCoccidioides immitisで、半乾燥地帯の限られた地域の土壌中に生息する。Coccidioides immitisの分節型分生子が強風などにより土埃とともに空中に舞い上がり、こ れを吸入することで感染する。感染者の60%は不顕性感染である。40%が症状を示すが、そのほとんどはインフルエンザ様症状で、発熱、頭痛、倦怠、筋肉痛、乾性咳嗽、胸痛などがみられ、 通常無治療でも自然治癒する。他に、小丘疹、結節性紅斑などの皮膚症状を生じ、一般検査で好酸球増多を示すことがある。しかしときには、重症肺感染症や播種性病変を生ずることがあり、 後者では髄膜、関節、骨、皮膚などに病変を生ずる。重症化の危険因子として、重症肺感染症では高齢者、慢性疾患保有者(うっ血性心不全、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患)など、播種性病変 ではアフリカ人種、フィリピン人種、免疫不全者(HIV感染者など)、妊婦などが挙げられている。人から人への直接の感染伝播はないが、検査室などで培養を行い、シャーレの蓋を不用意に 開けるなどすると分節型分生子が舞い上がり、高率に感染伝播の危険がある。したがって、本疾患を疑って真菌検査を依頼する場合には、事前に検査室に十分伝えておく必要がある。

予防は、流行地において砂ほこりを吸入しないことであるが、キャンプなどの野外活動で土の掘り起こしなどの作業を行うと、危険が高くなる。それらが避けられない場合には、0.4μmの粒子 をトラップできる塵埃マスクを緊密に装着することが望まれる。また、流行地の綿や藁などは汚染されていることがあるので、それらを持ち出さない注意も必要である。

コクシジオイデス症は感染症法施行(1999年4月)により全数把握疾患となり、診断したすべての医師に届出が義務付けられるようになった。その報告数は1999年には0、2000年1例、2001年2 例、2002年3例、2003年1例、2004年5例であった(図)
図. コクシジオイデス症の年別・推定感染国別報告数(1999年4月〜2005年第22週)

2005年は現在までに報告はない。これまでに報告された12例の推定感染地域は、米国が10例(アリゾナ州6例、ネバダ州1例、カリフォルニア州1例、記載なし2例)、メキシコが2例であった。年齢は28〜70歳(中央値37歳)で、内訳は20代1例、30代6例、40代2例、50代2例、70代1例であり、性別では男性11例、女性1例であった。

発病月については、記載があった7例のうち、4月の1例以外は8月2例、9月4例であった。死亡の報告はなかったが、現在の発生動向調査では、発生の届出以降に死亡した症例を再度届け出ることは義務となっていない。しかしこのような場合には、修正報告として届け出て頂くよう地方自治体にお願いするものである。


感染症発生動向調査週報 IDWR 掲載)


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