国立感染症研究所 感染症情報センター
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ジフテリアの輸入例(英国)


 バングラディシュとイタリアでそれぞれ罹患したと推定される2例のジフテリア患者が報告された。第1例は57才の男性で、バングラディシュから帰国3日後に咽頭炎、発熱、呼吸困難で入院、咽頭スワブから毒素産生Corynebacterium diphtheriae var mitis が分離された。第2例は69才の女性でイタリアから帰国後咽頭炎で入院、鼻咽腔に偽膜形成が確認、ベンジルペニシリンと抗毒素治療により回復する。鼻スワブよりCorynebacterium ulceransが分離される。C.ulceransによるジフテリアは英国で2 例の報告があり、感染源として畜牛、未殺菌の乳製品が推定されたが、関連のないものもあり感染源は不明である。(CDSC, CDR, 4, No.18, 81, 1994 & 4, Review No.5, R63,1994)

旧ロシアの新独立国家共同体(NIS)で大規模なジフテリアの流行、1995. 1月- 1996.3月
   ロシア連邦で1990年に始まった流行は、1994年末に15か国すべてのNIS に蔓延した。1990〜1995 年の間に世界中で報告されたジフテリア患者のおよそ90% がNISで発生し、流行が始まってから患者数約125,000 人、死亡者数約4,000 人以上となった。1995年の患者数は、前年比ロシア連邦では10% 減少したが、NIS では約2倍と増加した。しかし、NISで1996年の1〜3月まで(6,179人) の患者数を1995年の同期間(14,931人) と比べると59 %の減少が認められた。今回の流行の特色は成人が高率に感染していること、また子供はワクチン注射していない年代や北部ヨーロッパで第2次大戦中・後の大流行した年齢層でおこっている。

 疾病制圧計略は、成人と子供に対してジフテリアトキソイドを1 dose接種する集団接種キャンペーン、接種率は90% 以上を目標とした。NIS の数か国は、成人全体に対して高率に計略を達成することに成功し、発生率は低下した。ロシア連邦の発生率の減少は成人約7千万人にワクチン接種が行われた結果、急速に、かつ顕著に患者発生は減少した。すべてのNIS は子供のワクチン接種率の上昇にも努力をした。そのために、子供のワクチン接種時の禁忌事項を減らすこと等を認めた。流行を予防するために、DPT やDTワクチンを入学前や就学児童に接種し、さらに10年ごとにTd(ジフテリアトキソイドを減量した製剤) を接種すべきである。NIS では1996年の1-3 月で6,000 人以上の患者が報告されている。ワクチン、注射器と針、抗毒素、抗生物質などのために、今までに2 千万ドルが供与されたが、継続的な物資の不足はNIS 全体で見られる。国際的な組織や機関による持続的な援助が必要である。 (WHO, WER, 71,No33, 245, 1996)

アフリカ旅行者にみられたジフテリア Diphtheria in visitors to Africa
 タンザニアおよびその他のアフリカ諸国で数カ月滞在し英国に帰国した19歳の男性の脚部の小さいが深い創部から毒素産性型の Corynebacterium diphtheriae var mitisが分離された。全身状態は良好である。患者は、タンザニア旅行前にジフテリアの 追加免疫を受けている。患者はerythromycinで治療を受け、患者に接触のあった者のうちジフテリアワクチンの追加接種から1年以上たっている者についてはワクチンの再追加を、ワクチン接種歴のない者についてはerythromycinの投与およびワクチンの初回接種が開始された。Index caseであるアフリカ旅行者の中で無症状接触者2名の鼻咽腔より、 C.diphtheriae var mitisが分離された。これら3株の分子解析は同一の型であること示した。
 イングランド・ウエールズでは、1993?1997年に12例の輸入毒素型ジテリア感染症が報 告されており、うち6例が皮膚ジフテリアであった。皮膚ジフテリは、熱帯地域ではジ フテリアの多数を占める。咽頭ジフテリアに比較して毒素にる症状を現すことは少ないが、接触者の咽頭に容易に感染をするので、接触者には防的措置をすべきである。
(CDSC, CDR, 8 , No.33, 289, 1998 病原微生物検出情報、Vol.19, No.10(No.224)、10月、1998)

ニュージーランドでのジフテリアの発生
 ニュージーランドのAucklandで、咽頭炎に罹ったワクチン未接種の32ヶ月の子供の喉から、毒素産生性のジフテリア菌が分離された。患児は抗生剤が奏効し、入院および抗毒素は必要としなかった。これはニュージーランドでは1987年以来初めての毒素産生性のジフテリア分離例である。本例は乳児、小児から成人までジフテリアに対して完全に免疫されていることを確認する必要性を強調した。
 オーストラリアでは1993年に1例が報告されて以来、毒素産生性のジフテリア菌によるジフテリアの届け出はない。しかし、毒素産生性および非産生性のジフテリア菌はオーストラリアの一部で常在し、重症例が発生する可能性は残っている。無免疫あるいは適当な追加免疫を受けずに免疫が減弱している子供および大人は罹患する危険性と地域に拡散させる危険性がある。全ての子供と大人はthe National Health and Medical Research Councilの勧告に従ってワクチンを受けるべきある。(オーストラリアCDI, Vol.22, No.9, p.188, 1998 病原微生物検出情報Vol.19, No.10(No.224)、10月、1998)

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