国立感染症研究所 感染症情報センター
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オウム病 オウム病 1999年4月〜2006年第12週(2006年3月31日現在)

オウム病は、オウム病クラミジア(Chlamydophila psittaci )を吸入し、1〜2週間の潜伏期間を経て、突然の発熱、咳(通常は乾性)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などの症状が出現する疾患である。ときに、肝脾腫や比較的徐脈(高熱のわりに脈拍が速くならない)が認められる。胸部X線像ではスリガラス様陰影を呈し、いわゆる異型(非定型)肺炎像を示す。高齢者や治療が遅れた場合などには重症化し、致死的のこともあるので、注意が必要である。オウム病の発生動向については、1999年4月の感染症法の施行以前は定点把握疾患の「異型肺炎」に含まれており、独立した疾患としての実態は不明であった。感染症法では4類感染症に規定されて全数把握疾患となり、診断したすべての医師に届け出が義務づけられている。

感染症法の元で報告されたオウム病は254例であり、年別では1999年(4月〜)23例、2000年18例、2001年35例、2002年54例、2003年44例、2004年40例、2005年34例、2006年6例(第12週:3月26日診断分まで)であった(図1)

この様に、年間の届け出数を過去4年間(2002〜05年)でみると、鳥展示施設での集団発生を除き、40例前後である。都道府県別では特に大阪府32例、東京都27例が多く、一方、1例も報告のない県が5県(秋田県、山形県、富山県、徳島県、鹿児島県)みられた。集団発生としては、家族内のものを除き2001年に動物公園(5例)、2002年に鳥展示施設(17例)、2005〜06年に鳥展示施設(3例)がみられた。

254例を性別でみると、男性111例、女性143例で女性にやや多かった。年齢は1〜90歳(中央値:53.5歳)で、年齢群別では0〜9歳2例、10〜19歳8例、20〜29歳18例、30〜39歳37例、40〜49歳41例、50〜59歳57例、60〜69歳50例、70〜79歳36例、80〜89歳4例、90歳以上1例であった(図2)。この様に、50代をピークに幅広い年齢層にみられるが、30歳未満では少なく、30歳以上が全体のほぼ90%を占めていた。性別・年齢群別にみると、男性では50代をピーク(1〜90歳、中央値58歳)としているのに対し、女性では30代をピーク(11〜88歳、中央値49歳)としていた。

図2. オウム病の報告症例の性別・年齢群別分布(1999年4月〜2006年第12週) 図3. オウム病の報告症例の発症月別分布 図4. オウム病の報告症例の推定感染源

発症日の記載があった234例について発症月をみると、4〜5月が多かった(図3)。病原体や媒介動物等との接触または生息場所での活動として、「動物等との接触の機会あり」、あるいは推定される感染源・感染経路等として「動物等からの感染あり」と報告されたものは226例あった。動物等の種類としては、「ヘラジカ」と記載されたものおよび詳細不明を除く206例で、鳥類が推定されていた。鳥類の種類についてはインコが推定されたのが141例、ハトが推定されたのが26例、オウムが推定されたのが14例であった(図4)(例数は重複して計上)。同疾患または同様の症状を有する者の有無については、「同居者にいる」が56例、「同じ職場や学校等にいる」が15例、「その他」が17例あり、全体の34.6%で周囲に同疾患または同様の症状を有する者がみられた。

検査診断としては、病原体検出は5例(病原遺伝子の検出3例、詳細不明2例)に行われたのみで、血清抗体検出が248例に行われていた(表)。補体結合反応(CF)のみで診断されたものが173例と、全体(254例)の68%を占めていた(方法の記載されていないものもあり)。

しかし、CF法は属共通抗原を用いて行われており、同様の症状を起こすクラミジア肺炎(病原体はChlamydia pneumoniae )でも上昇するため、勧められない。確定診断には、種の特定が可能なmicro-IF法などによる検査が必要である。届出基準でも、血清抗体検査としては原則としてmicro-IF法によることとされている。Micro-IF法による検査は必要に応じて、一部の地方衛生研究所や国立感染症研究所、また一部の研究機関などに検査依頼することができる。

飼育鳥の衛生管理は鳥にとって重要であるとともに、飼育にたずさわるヒトへの感染予防としても基本である。乾燥した糞を吸入しないよう、また口移しで餌をやらないよう注意する。特に病鳥の扱いには注意する。患者が診断された場合には、医師が問診を適切に行い、保健所が適切な調査を行うことが求められる。すなわち、感染源に関する情報、例えば、問題となる鳥の種類や状態、推定される感染場所や原因と考えられる行動などを詳細に把握し、必要な場合には推定感染源からの病原体の検出や投薬治療などの措置を行い、感染拡大防止ならびに今後の感染予防策に役立てることが重要である。

感染症発生動向調査週報 IDWR 2006年第16週掲載)


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