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3/19/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−2



重症急性呼吸器症候群(SARS)の可能性例に対する
WHO院内感染対策ガイダンス
(仮訳・注釈)


 WHOはSARS症例に対して、空気、飛沫、接触感染への予防措置を全て含めた、バリアナーシング手技(注:病原体封じ込め看護)を強く勧めている。

 医療機関にインフルエンザ様の症状を呈する患者が受診した場合、待合室で他の患者への伝播を最小限に止めるため、担当看護師は速やかにその患者を、指定された別室に誘導する。SARSが否定されるまで、患者には外科用マスクを着用させる。

 SARS可能性例は次の優先順位に従って病室に入院させる。
    1.ドアが閉鎖された陰圧の病室
    2.手洗い、風呂を備えた個室
    3.独立した給気と排気システムを持つ大部屋など

 独立した空調がない場合は空調を止め、換気を良くするために外に面した窓を開ける事も推奨される。可能であれば、SARSの疑いで検査を受けている患者と、診断が確定した患者は同室にしない。

 可能な限りSARSの患者には使い捨て医療器具を用いる。再使用する時は、製造業者の仕様書に沿って消毒する。器具の表面は細菌、真菌、ウイルスに有効な広域の消毒剤で消毒する。

 患者の移動は可能な限り避ける。移動させる必要が生じた場合、飛沫の拡散を避けるため、外科用マスクを着用させる。患者が我慢できるなら、結核など伝染性の高い呼吸器疾患の予防に頻用されるN95マスク使用が望ましい。SARS可能性例または疑い例患者の病室に入る全ての面会者、スタッフ、学生、ボランティアにもN95マスクを着用させる。N95マスクに比較すると外科用マスクの有効性は低い。

 手洗いが感染予防のためには最も重要であり、手袋を使えば手洗いは不要と考えてはならない。どのような患者であっても接触した後、病原体に曝露される可能性のある医療行為を行った後、および手袋をはずした後も手洗いする。手洗いできない場合には、アルコールを含む手指消毒剤を用いる。看護師は全ての患者の看護を行う際には手袋を着用する事が推奨される。手袋は、患者毎に、または患者の気道分泌物に汚染される可能性がある酸素マスク、酸素チューブ、経鼻酸素チューブ、ティッシュペーパーなどの物品に触れた後は必ず交換する。

 患者の気道分泌物の飛沫や飛散が発生する可能性のある処置や看護の際には、耐水性ガウン、頭部カバーを使用する。

 血液、その他の体液が飛び散る可能性がある場合、さらには、ゴーグル、顔面カバーも必要になる。

 血液、その他の体液が飛び散る可能性がある場合、空気感染が生ずる可能性がある場合、スタッフは常にマスクを着用する。

 SARSの疑い例、可能性例の患者に付き添う場合、N95マスクのように0.3μmの粒子を防護できるフィルターを使用する。

 いかなる医療廃棄物の取扱いにおいても、標準予防策を適応する。

 全ての医療廃棄物の取扱いの際には、紛れ込んだ注射針などによる外傷に注意する。

 医療廃棄物の入ったゴミ袋、ゴミ箱を取り扱う場合も、手袋と防護服を着用し、素手では取り扱わない。

 なお医療廃棄物はバイオハザードが印された漏出しない強靱な袋、ゴミ箱に入れ、安全に廃棄する。

(参考文献:小林寛伊、吉倉廣、荒川宜親 編「エビデンスに基づいた感染制御」、メヂカルフレンド社)


 
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