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中国南部におけるSARS症例の臨床検査による確定

WHO 2004/1/5(原文

疾病の集団発生報告

本日受理された検査結果により、中国南部広東省の32歳男性はSARS症例と確定した。この患者はテレビ・プロデューサーで、昨年12月20日以来、(広東省の)省都である広州市の病院において、隔離、治療中である。

この症例は2004年になって初めてのSARS確定例であり、2003年7月5日に前回のSARS集団発生の制圧が宣言されて以後に発生した、実験室事故に関連しない初めての症例である。実験室関連の感染例は、先の制圧宣言の日以降の昨年9月にシンガポールで、12月に台湾(中国)で発生した。

広東省の症例は、中国当局によりSARSが疑われる症例として最初に報告された、昨年12月26日以来、WHOの支援を得て調査されてきた。以前に行われた診断的検査によって結論は出なかった。SARSの診断検査の限界の観点から、WHOが指定するリファレンスラボによる陽性結果の確認がSARS確定診断に必要である。

その確定検査は香港において、香港大学瑪麗皇后醫院(University of Hong Kong,Queen Mary Hospital)と政府ウイルス部(政府病毒實驗室:Government Virus Unit)の2ヵ所で行われた。両研究室とも、2003年4月中旬に協同してSARSコロナウイルスを同定した、WHOの「SARS診断のための多施設協同ネットワーク」のメンバーであり、十分なSARS診断の専門的知識を持っている。

この新たな確定例に対する感染源は、不明のままである。昨年行われたいくつかの系統的調査により、SARSは中国南部の動物市場(live market)で、人間の食用として売られている野生動物との接触に端を発した可能性が示唆されていた。昨年行われた研究では、ハクビシンなどのいくつかの動物種からSARS類似ウイルスが検出された。患者記録の遡り分析によって、2002年11月中旬に広東省で発生した最も早期の症例の中から、野生動物との接触に関連づけられたものがあった。しかし現在までのところ、最終的にSARSコロナウイルスの動物リザーバとして特定されたものは無い。

中国での疫学的調査はこの患者を、野生動物やその他の既知あるいは、疑わしいウイルス源への暴露と関連づけることが未だできていない。

中国当局は、症例の調査が進むにつれていくつかの対策を実施していた。患者は、発症4日後の12月20日に入院して以来、隔離されて治療を受けていた。すべての接触者が特定され追跡調査されている。全員が症状も無く、ほとんどが隔離を解かれたことから、これ以上の感染伝播は発生しなかったと推測される。広東省や他の省において、さらなる症例に対するサーベイランスが強化されている。

一例の孤発例はSARSアラート(「SARSの集団発生終息後の期間におけるアラート、情報確認、 公衆衛生上の管理」参照)の発令や、旅行や貿易に関するいかなる制限の勧告の根拠にもならない。

中国当局の要請により、感染源を特定し、更なる症例の発生を防ぐことを目的とした調査の支援のために、今週さらにWHOのチームが追加派遣される。

SARSの最初の症例は、2002年11月中旬に広東省で発生した。SARSは2003年2月下旬に国際的に拡散し始め、最終的に27カ国において8,000人以上の症例と、774人の死者を出した。

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2004/1/6 掲載 IDSC

 
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