IDSC 緊急情報トップ >
 

 

4/3/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−18


(仮訳)

WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(4月2日、更新第18報)


SARS集団発生:WHO調査団は中国への移動、新旅行勧告の発表
(WHOの記者会見)

WHOによる記者会見の内容

世界保健機関(WHO)は本日中国政府が、現在北京に滞在しているWHOの専門家チームが、現地でSARS集団発生の調査を行うために、広東省へ移動すると発表したと伝えた。
「これは昨今中国政府が取った非常に前向きな一歩である。その結果我々は、中国におけるSARS集団発生の特性についての知見をもっと集めることができる。」と、WHOの感染症局長David Heymann博士は語った。

これに加えWHOは中国の香港特別行政区と広東省へ旅行する者へ、どうしても必要な旅行以外はすべて延期するように勧告を始めた。この旅行勧告の改訂は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の多国間集団発生の新しい展開を受けて行われたものである。

この暫定勧告は、流行状況に応じて毎日再評価される。この勧告は、香港中国特別行政区と広東省(中国)の空港で、ただ乗り継ぎをするだけの旅行者には適応されない。
この新しい旅行勧告は、感染リスクの高い地域への旅行を減らすことで、これ以上のSARSの感染拡大を防ぐことを目的としている。重症急性呼吸器症候群(SARS)に関したこれ以外の事項については、以前に出された旅行勧告を引き続き参照する。WHO recommends new measures to prevent travel-related spread of SARS(日本語)

香港特別行政区におけるSARSの状況は独自の様相を呈してきた。症例数は引き続き著しく増加し*、流行初期に中心となっていた病院以外へもSARSが広がった事が示唆されている。これらの状況の進展から、他のSARS感染経路が存在するのではないかと言う疑問が提起される。この疑問には、ヒトからヒトへ何らかの「環境」要因を介したウイルスの伝播があるのではないかと言う点も含まれているが、今までのところこの可能性に関して、満足のいく説明は見つかっていない。また3月19日以来、香港特別行政区を訪問し帰国した後に発症し、SARSと診断された旅行者が9人いる。
香港と境界を接する広東省での集団発生の状況については未だ、解決されなければならない多くの疑問が残っている。この集団発生は報告されたものの中で最大で、より広範囲に地域社会へ広がったことを示す証拠もある。3月だけで300例の新規症例があったと言う本日省当局から提供された新しい情報は、現地での集団発生が続いていることを示している。

SARSに関する知見の獲得と封じ込めは、前例の無い世界的協力によって行なわれている。

WHOがSARSを追跡し始めて4週間がたつが、この間に多くの事が解った。この多くは、あらゆるところの科学者や臨床家、研究所長や公衆衛生担当官らが、密接に連携した成果である。

平成15年3月15日にWHOが世界的な警報(global alert)を出して以来、各国家当局がSARS症例の強化サーベイランスを導入した。新規患者を報告してくる国の数は増えているが、そのような症例は迅速に発見され、患者は隔離され、ほとんどの国では地域内での伝播は防がれている。

最新の設備の無い国においても、SARSの院内感染の終息に感染制御手法が有効である事が、今では解っている。

WHOと11の世界の有数の研究施設は、SARSの原因解明に近づきつつあり、診断検査法も開発された。この検査法はSARSウイルス感染者と非感染者を区別するのに役立つ。
研究施設のネットワークはさらに研究を続けている。今までのところ、SARSの起因病原体は未だ完全には解っておらず、特定の治療法や、ワクチン、既に解っている他の予防手段は無い。

「将来、この他に新たに興ってくる疾病があると思うし、我々はそれに対してもSARSに対したと同様に対応する。つまり、感染の拡大防止に最大限の努力を払うと言うことである」と、WHOの感染症サーベイランス対策部長のGueael Rodier博士は述べた。

* SARSの患者情報と報告国に関する情報は、毎夕、WHOのウエッブサイトにジュネーブから掲載されている。日本語版に関しては、国立感染症研究所感染症情報センターのホームページに掲載されている。


 
  IDSCホームページへ