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4/3/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−19


(仮訳)

WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(4月2日、更新第19報)


SARS封じ込めにおける中国の一層の協力強化と、新しい情報に基づき改訂されたWHOの国際旅行者への勧告

中国からの新しい情報と、広東へ即時出発予定のWHO調査団


中国当局は本日、広東省における最新の重症急性呼吸器症候群(SARS)の症例数と死亡数を発表した。報告数は平成15年3月1日から3月31日までの期間が対象で、新規のSARS症例361例と死亡例9例である。

中国当局はこれ以前に広東省からの報告として、平成14年11月16日から平成15年2月28日までの報告期間に、792症例、31死亡例を報告している。11月16日から3月31日までの広東省におけるSARS症例の累積報告数は、今や1,153症例、40死亡例に上る。

中国保健省は更に、WHOの5人からなる調査団が直ちに広東省へ飛び、現地の担当官たちと協議に入ることを発表した。中国で最も早期に起こったSARS集団発生の経験から、他地域で起こっている集団発生の終息と更なる国際的感染拡大を防ぐために役立つ対策を確立するための、疫学と臨床上の手がかりが得られることが期待されている。

香港と境界を接する広東省での集団発生については未だ、解決されなければならない多くの疑問が残っている。この集団発生は今日までに報告されたものの中で最大で、より広範囲に地域社会へ広がったとする証拠もある。

中国国内ではこの他の地域から、新しい感染伝播の報告はない。中国当局は、国中からSARS症例を、リアルタイムに毎日報告するシステムを設置しつつある。


新しく出された旅行者への勧告

中国と香港からの新しい情報に基づきWHOは、SARSの更なる国際的拡大を防ぐ対策のひとつとしての、国際旅行客への勧告を本日改訂した。

今朝の記者会見で、WHOは以下のような勧告を発表した。
「世界保健機関(WHO)は、本日より中国の香港特別行政区と広東省へ旅行する者へ、どうしても必要な旅行以外はすべて延期するように勧告を始めた。この旅行勧告の改訂は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の多国間集団発生の新しい展開を受けて行われたものである。」

この新しい旅行勧告の目的は、SARSの伝播様式が完全に解明されていない地区への旅行を制限することで、これ以上のSARSの国際的感染拡大を防ぐことである。急速に変化しているSARSの状況は、WHOと三つの世界的ネットワークに属する専門家たちによって常に評価検討されている。SARSに関する情報がさらに得られて行くに従い一連の対策が変更されていくが、新しい勧告はその一部として発表された。

国際的感染拡大に関する新しい情報

WHOは夜のうちに、3月15日付の香港への旅行歴があり、他の国へ移動をしてから後に、SARS「可能性例」を疑わせる症状で発症した9例の報告を受けた。これら9例の香港への旅行に関連したSARS「可能性例」は、台湾(中国)とシンガポールで発症している。これらの症例の情報と、SARSの潜伏期について知られている事から、香港への旅行はSARSの国際的感染拡大につながることが示唆された。

WHOは3月15日にSARSに関連した緊急旅行勧告を出している。これによって、この新しい疾患に対する意識が世界的に高まり、旅行者と医療従事者が症状に関して注意を払い、症例の迅速な報告が行われるようになった。

香港特別行政区のSARS集団発生は、普通とは異なる伝播形式で進展した。ここでの伝播形式は、他のほとんどのSARSの集団発生で見られている形と異なっており、未だに完全には解明されていない。症例数は著しく増加し続けており、当初の中心となっていた病院以外へ感染が広がっている証拠がある。

この状況の進展から、詳細に報告されている、感染患者が咳やくしゃみをした際に飛散する飛沫に面と向かって曝露される感染経路に加え、その他の経路が存在するのではないかと言う疑問が提起される。疫学者たちは、香港でSARSが、未だ満足の行く説明が付かない何らかの環境的手法で伝播されたのではないかと考えている。

香港の九竜地区にある淘大花園(アモイガーデン)住宅団地の、いくつかの居住棟に関連した大きな症例群に特別な懸念が集まっている。


歴史的見地

WHOの歴史の中で今回始めて、特定の地理的領域に感染症の集団発生のために、このような旅行勧告が出された。

国家当局が到着旅客に対して、公衆衛生学上の対策を取るか否かの決断が可能になるように、WHOは1958年以来毎週、検疫可能な疾患に関して感染が確認されている地域の一覧を発表してきた。天然痘撲滅キャンペーンの最後の数年間には、症例が陸路で国際的に広がった。このときは、隣接する国の国境における制御管理に頼り国際的感染拡大を防止し、国際的な勧告は必要ではなかった。


 
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