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2003/5/16(改訂)



WHO研究施設ネットワークが集積した
SARSコロナウイルスの安定性と抵抗性に
関する最初のデータ

(改訂5月15日)


下の表にSARSコロナウイルスの、環境因子および消毒剤に対する抵抗性に関して集積された、最初の情報を提供する。この情報は、WHOのSARS診断に関する多施設共同研究ネットワークに属する研究施設によってもたらされた。用いた方法、材料に関する詳細な情報は取りまとめて、近く提供される予定である。今回の研究結果の主要な点を以下に示す。

糞便および尿中のウイルス生存期間

糞便(尿)中では、室温で最低1〜2日間ウイルスは安定である。

(pHが正常便中より高い)下痢症状の患者の便中では、ウイルスは(最高4日まで)より安定である。

消毒剤と(実験室で使用する)固定剤

一般に用いられている様々な消毒剤や固定剤による処理で、ウイルス感染性はなくなる。

細胞培養上清中でのウイルスの生存

4℃と-80℃では21日後でも、ウイルスの感染性(感染性のあるウイルスの量)はほんのわずかしか減少しなかった。

室温(一定)で2日間経っても、ウイルス濃度は1 log の減少しかしない。このことから、このウイルスは、これらの条件下で今まで知られているヒトコロナウイルスより安定であることが示唆される。

56℃の熱処理で、SARSコロナウイルスは15分当たり約10,000ユニットが死滅する(急速減少)。

 

研究所 材 料 開始時ウイルス
カウント
(log 10PFU)
条件 生存時間 ウイルス活性の確認方法

GVU

乳児便中にウイルスを混ぜたもの 1.00E+03 pH 6-7 3時間 培養でウイルス分離
正常便にウイルスを混ぜたもの 7.50E+03 pH 8 6時間 培養でウイルス分離
下痢便にウイルスを混ぜたもの 7.50E+03 pH 9 4日間 培養でウイルス分離

QMH

便 1.00E+03 室温 最低2日間 培養でウイルス分離
尿 1.00E+03 室温 最低24時間 培養でウイルス分離
ウイルス培養溶液+1%ウシ血清 1.00E+03 プラスティック表面で、室温 最低2日間 培養でウイルス分離
ウイルス培養溶液+1%ウシ血清 1.00E+04 30-37℃ 最低1時間 培養でウイルス分離
ウイルス培養溶液+1%ウシ胎児血清 1.00E+04 56℃ 経時的にウイルス価の減少 (15分当たり、10,000感染性ウイルスユニット) 培養でウイルス分離
ウイルスをアセトン;10%ホルムアルデヒドとパラホルムアルデヒド;10%クロロックス;75%エタノール;2%フェノール 1.00E+06 室温 5分 培養でウイルス分離

NIID

ウイルス培養溶液+2%ウシ血清 1.00E+06 -80℃ 最低4日間 ウイルス分離とRT-PCR
ウイルス培養溶液+2%ウシ胎児血清 1.00E+06 4℃ 最低4日間 ウイルス分離とRT-PCR
ウイルス培養溶液+2%ウシ胎児血清 1.00E+06 37℃ 4日未満 ウイルス分離とRT-PCR
ウイルス培養溶液+2%ウシ胎児血清 1.00E+05 56℃ 30分未満  

UniM

ウイルス培養 1.00E+06 4℃ 最低21日間 ウイルス分離
ウイルス培養 1.00E+06 -80℃ 最低21日間 ウイルス分離

CUHK

○ PBS(リン酸緩衝食塩水)中のウイルス

○ 滅菌した便中のウイルス
9.00E+4 物体表面、室温 PBS中 便 中 培養でウイルス分離
塗り壁 24h 36h
プラスチック表面 36h 72h
フォーマイカ(合成樹脂)表面 36h 36h
ステンレススティール 36h 72h
12h 24h
綿布 12h 24h
豚皮 ≧ 24h ≧ 24h
スライドガラス 72h 96h
紙製ファイルカバー 24h 36h

 

CUHK:Chinese University Hong Kong(香港中文大学)
GVU:
Government Virus Unit, Dept. of Health HGK, Hong Kong(香港衛生署政府ウイルス部、香港)
QMH:Queen Mary Hospital, The University of Hong Kong, Hong Kong(香港大学クイーンメリー病院、香港)
NIID:国立感染症研究所、日本
UnivM:University Marburg, Germany(マールブルグ大学、ドイツ)

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