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2003/6/30

重症急性呼吸器症候群(SARS)−90



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(6月27日、更新第90報)


日本の症例は取り下げ、「最近の地域内伝播」がある地域の一覧からの削除のための要件


日本の症例

日本の厚生労働省は本日WHOに対して、水曜日(6月25日)に報告があったSARSの「可能性例」が取り下げられたことを報告した。詳細な臨床検査の結果、B型インフルエンザの診断が患者の症状の原因であることが確認された。

この症例は台湾からの33歳の男性で、6月21日に東京に到着し、2日後に高熱を含む症状で発症した。

WHOの一覧表から削除するための要件

WHOによる、SARSの「最近の地域内伝播」がある地域の一覧表からの削除のための要件に関する質問が最近提出された。最後に報告された「可能性例」が「効果的な隔離」状態に置かれた、その地域を離れた、死亡した、のうちいずれかの後20日間、言い換えると潜伏期間の2倍の期間が経過した時に、その地域は一覧から除かれる。仮にこの期間中に新しい症例が検知されなかった場合は、感染伝播の連鎖は断ちきられたと考えられる。

SARS「可能性例」を隔離することで、地域社会からこの患者を取り除くことになり、他人へウイルスを伝播する機会を減らすことができる。しかしながら、これでは完全に感染伝播のリスクと取り去ることはできない。20日間、新たな症例の発生がないことは、それ以上の伝播が起こらなかったことを示すために必須であると考えられる。「効果的な隔離」とは、SARS患者が医療施設において、スタッフが個人防御用具*の使用を厳密に守ることを含めた、厳格な感染予防措置にしたがって管理されることである。

*個人防御用具:適切な呼吸器の防護が行えるマスク、手袋(両手)、眼の防御用具(ゴーグルなど)、使い捨てガウン、エプロン、汚染除去可能な履物(SARS院内感染対策指針:入院時を参照

20日後に一覧表から削除されるのは、最後の有症状例が「効果的な隔離」下に置かれて初めて適用され、これはSARS症例の接触者が予防的措置として自宅隔離に置かれた場合は適用されない。今までの経験からSARSの感染伝播は、その人に症状がある場合に起こっていることを示している。無症状の接触者は、他の人を感染させるリスクに曝すことはないと思われる。

したがって無症状の、疾病を広げるリスクの無い人を隔離してから20日が経過した後に、感染伝播の連鎖が断たれたと宣言するのは、誤った「安全の意識」を与えることになる。それによって、さらに感染伝播が起こる可能性が無いことを確認するために必須と考えられる、医療上の経過観察や隔離の期間が短縮されたりすることになる。

このような理由からWHOは、「最近の地域内伝播」があった地域の一覧からその国を削除しても安全であるという決定を行うために、患者が症状を発症してから、隔離された、その地域を離れた、死亡した、のいずれかの20日後という厳格な要件を用い続けている。最近の出来事から、SARSは特に復元力があり、容赦ない疾患で、警戒や感染予防措置のどのように些細な緩みにもつけ込む用意があることが明らかになっている。

現時点では、トロントと台湾が一覧表上に残っている。トロントで直近に検知された「可能性例」は、6月12日に発症し直ちに隔離された。台湾から報告された最後の「可能性例」は6月15日に検知され隔離された。「最近の地域内伝播」があった地域の一覧は当初、WHOによるSARSの「疑い例」と「可能性例」の定義を適用し易くするために作成された。この症例定義は双方とも、「疑い例」か「可能性例」との密接な接触歴を必要としている。「最近の地域内伝播」が起こっている地域の一覧は、臨床医が症例との接触が可能であったかどうかを判断することを助け、診断に至るのを支援するものである。

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