国立感染症研究所 感染症情報センター
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水の確保と手指衛生

2011年3月24日現在
国立感染症研究所感染症情報センター

はじめに

 自然災害の際、適切な質の水を十分な量確保することは、最も優先順位の高い基本的ニーズです。十分な量の水の確保は、生命を維持するだけでなく、衛生を維持するために必要です。災害時の避難所等では、十分な水が確保できないと、適切な衛生を保つことが困難となり、急性下痢症などの感染症が発生するリスクが高まることになります。流水がない、あるいは水が不足しているが速乾性アルコール製剤がある、というときは速乾性アルコール製剤を使いますが、流水があるのでれば、流水による手指衛生の実施がより重要です。http://idsc.nih.go.jp/earthquake2011/2011pdf/20110314risuku01.pdf


緊急時に必要な水の量

 日本では通常1日で1人当たり250〜300L以上の水を消費しています。トイレでの使用が約30%弱、風呂での使用が約4分の1で合わせて半分以上になります。続いて、炊事、洗濯と続き、これらを合わせると約90%になります。災害発生時には、しばしば適度な質の水を確保することが困難となります。自然災害後の緊急対応における国際的な基準では、飲料水等で生命を維持するための水の最低必要量は5L/人/日(気候や環境によって変動します)と言われ、災害発生直後の超急性期にもこの量の水の確保が必須条件となります。さらに、食事や最低限の衛生を確保するためには15〜20L/人/日以上が必要とされています。どの位の水が確保できれば、どの程度衛生に関連した感染症が予防できるかを定量的に示すことは困難ですが、感染性胃腸炎の予防としては、25L/人/日以上が目標とも言われています。


衛生の確保と適切な水の使用
 避難所等では収容している人数に応じた定量的な水の確保は重要ですが、手洗い等の衛生的な行動を実践し適切に水を使用することも重要です。1日1人当たり25-30Lの水は、通常の使用量の10分の1の量です。水の使用量は、生活習慣や文化によって変動しますが、手指衛生が優先順位の高い用途であることを理解し、限られた水を効果的に利用することが大切です。感染性胃腸炎予防としては、石鹸と流水による手洗いが最も推奨される個人予防策(http://idsc.nih.go.jp/earthquake2011/IDSC/20110322ityouen.html)です。十分な量の水の確保が前提ではありますが、適切な手指衛生行動を実践することが重要となります。


参考資料

Sphere Handbook(http://www.sphereproject.org/component/option,com_docman/task,cat_view/gid,70/Itemid,203

Medicins Sans Frontieres: Refugee Health: an approach to emergency situation, Macmiillan Education Ltd., 1997, London and Oxford

WHO, Environmental Health in emergencies and disasters (http://www.who.int/water_sanitation_health/emergencies/en/index.html)

(2011年3月25日 IDSC 更新)

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