The Topic of This Month Vol.17 No.3 (No.193)


無菌性髄膜炎と関連ウイルスの動向 1995

無菌性髄膜炎はエコー(E)、コクサッキーB群(CB)のエンテロウイルス、ムンプスウイルスが主な病原体である。日本では例年夏を中心にエンテロウイルスによる無菌性髄膜炎の患者が増加する(図1)。

感染症サ−ベイランス情報による1995年の無菌性髄膜炎患者報告数は1,619人(一定点医療機関当たり3.10人)で、過去最低であった。患者の年齢は0〜4歳44%、5〜9歳38%、10〜14歳9.5%、15歳以上8.5%で、0歳の割合(18%)が1982年のサ−ベイランス開始以来最大であった(図2)。

1995年には,病原微生物検出情報へ髄膜炎患者440例からのウイルス分離が報告された(1996年2月20日現在報告数)。このうちCB5が113(26%)、E7が75(17%)、CB3が69(16%)で、髄液からの分離はそれぞれ92、58、46であった(表1)。1990〜1994年に髄膜炎患者からの分離報告が多かったE9は大きく減少した(1994年311→9、本月報Vol.16,No.3参照)。

図3に1995年に髄膜炎患者からの分離報告が多かったCB5、E7、CB3の月別分離報告数を1994年と1995年の2年間について示した。CB3とCB5はともに1994年(本月報Vol.16,No.8参照)に引き続いて1995年も毎月分離が報告され、報告数のピ−クは7月であった。1995年にCB3は全国各地の37機関から375、CB5は25機関から219(うち香川から108)の分離が報告された。E7は1995年4月以降毎月分離が報告され、夏以降も、報告が増加している。鳥取(本号3ページ参照)、福島、島根など22機関から217の分離報告があった。

エンテロウイルスの流行季を過ぎてもなお分離報告が続いているE7の過去の報告機関別分離報告をみると(表2)、1986年に大きな流行があり(本月報Vol.8,No.1参照)、愛知、岐阜などを中心に多数分離された。1987〜1992年の報告は全国的に少なかった。1993年には局地的な流行があったが(本月報Vol.14,No.8参照)、1994年の報告は少なかった。

1995年にCB5、E7、CB3が分離された例およびそのうち髄膜炎が報告された例の年齢を図4に示した。CB3、CB5分離例はいずれも0歳が最も多い。また0歳では髄膜炎の報告が多いのに比べ1〜2歳では少なく、3歳以上で再び増加している(本月報Vol.16,No.8参照)。E7分離例もCBと同様に0歳では髄膜炎の報告が多いが、1〜2歳では少なかった。0歳の髄膜炎患者について月齢を詳しくみると、0〜2カ月の割合がE7分離例では85%(11/13)、CB3では88%(29/33)、CB5では66%(21/32)を占め、3カ月以上の占める割合は少なかった。

秋から冬にかけてのウイルス分離についてはまだ速報であり、これから報告が追加されると思われる。1995年夏以降に分離報告が増加しているE7の今後の動向が注目される。


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