The Topic of This Month Vol.17 No.10 (No.200)


<特集>陰部クラミジア感染症 1993〜1995

厚生省感染症サーベイランス(NESID)による性感染症(STD)患者情報は全国都道府県および指定都市に設けられた約600の定点から収集される。定点の診療科目は、泌尿器・性病科57%、産・婦人科31%、皮膚科10%、その他1.2 %となっているが、地域によっては定点に産・婦人科が含まれていない(1990年3月現在)。STDの対象疾患は5種(表1参照)で、それらの患者総数は情報収集が開始された1987年以降、1988〜89年に減少、1990〜91年に増加が見られたが、再び1992年から減少傾向にある。しかしこのうち、陰部クラミジア患者数は1987年以降92年まで増加傾向にあり、この間の患者数の増加は女で著しい(本月報Vol.11、No.9、1990、Vol.14、No.8、1993参照)。

STD患者の報告総数は1993〜95年も引き続き減少傾向にある(表1)。陰部クラミジア患者数は1993年に一旦減少したものの94年には再び増加したのに対し、1994年に淋病様疾患患者が大幅に減少した。このため、全STD患者に占める陰部クラミジア患者の割合は1992年の38%から94年には44%に上昇した。1995年には陰部クラミジア患者はやや減少したが、淋病様疾患患者が増加したため、全STD患者に占める陰部クラミジア患者の割合はやや低下した。

淋病様疾患患者数に対する陰部クラミジア患者数の比をとると、1994年までは1990〜92年に引き続いて大きくなる傾向にあったが、1995年には小さくなった(表1)。

1993〜95年の陰部クラミジア患者の性・年齢別発生状況を一定点当たりの年間患者数からみた。患者発生のピークは1990〜92年と同様に、男25〜29歳、女20〜24歳であった。また、この年齢群(20〜24歳)の女の患者数は1992年以降男の患者数を上回る傾向にある。全年齢での性比は1992年の1.45から1.26〜1.29に低下した(表2)。

病原微生物検出情報ではNESIDとは別に全国の協力医療機関から検査材料別の病原菌検出数を集計表の形で収集している(性・年齢は不明)。1993〜95年の陰部尿道頸管擦過物からのChlamydia trachomatis検出数は1,747 〜 1,871で、1992年の1,984よりやや少ない。一方、淋菌の検出数は1992年以降減少傾向がみられたが、1995年には増加しており、NESIDの傾向を反映している(表3)。

1993〜95年に地研等11機関から病原微生物検出情報へ報告された個票によるクラミジア検出例は706であった。検体別では泌尿生殖器683 、眼ぬぐい液23で、検出法は細胞培養 207、蛍光抗体 382、酵素抗体 174であった(複数の方法による検出例を含む)。泌尿生殖器からのクラミジア検出例について、年齢不詳4を除き、臨床診断名の記載があり症状ありと報告されたもの(有症者)582、症状のないものおよび検査希望(無症者)97の計679について、患者の性・年齢別分布をみた(図1)。男では20〜29歳が多く、いずれの年齢群においても、無症者の比率は6.9 %以下であった。女も20〜29歳が多いが、無症者の比率は36〜48%と高く、30〜44歳でも44〜56%は無症者であった。

また、眼ぬぐい液からのクラミジア検出が2地研から23例報告された。18例で診断名が記載されているが、いずれも角結膜炎で、患者の性・年齢別分布をみると、男では25〜29歳、女では15〜19歳の低年齢に多い(図2)。

1996年は、NESIDの第2四半期までの情報によれば、STD患者は全体として増加の傾向にあること、特に淋病様疾患の増加が目立っており、陰部クラミジア感染症は大都市で増加していると報告されている。


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