1995年つつが虫病・紅斑熱様患者集計報告

衛生微生物技術協議会検査情報委員会 つつが虫病小委員会

1995年の調査より、従来の「つつが虫病様患者調査票」を、「つつが虫病・紅斑熱様患者調査票」にかえて情報収集を行った。

この目的は、つつが虫病に加えて紅斑熱(紅斑熱群リケッチア症)の実態を把握し、これらの疾患の防疫対策の資料とするものである。

紅斑熱は、臨床症状がつつが虫病に酷似しているダニ媒介感染症であり、病原体はつつが虫病リケッチアとは属を異にするリケッチアである。従って、これらの疾患の鑑別には血清反応等が必要である。

わが国においては1983年に徳島県において紅斑熱が発見されて以来1994年までに、千葉、神奈川、三重、和歌山、兵庫、島根、高知、宮崎、鹿児島の各県において確認されている。

1)つつが虫病・紅斑熱の県別、月別発生状況:つつが虫病・紅斑熱様患者調査票は34府県の地方衛生研究所から合計 596件送付された。596件のうち、つつが虫病患者は 424名(表3参照)であった。また、紅斑熱抗体は120名について測定され、16名が患者と診断(表3参照)された(表1)。

つつが虫病患者数は1993年の573名、1994年の478名と、このところ減少傾向にあるが、発生都府県数は1993年26、1994年23に対して、1995年は35(うち、兵庫は韓国からの輪入症例、愛知の症例は熊本における感染)と増加している。多発県は、秋田、福島、千葉、新潟、岐阜、大分、宮崎、鹿児島の各県で、例年と同じ傾向である。

月別発生については、東北地方の各県と新潟県が5月をピークとして4〜6月に多く、それ以外の千葉、神奈川、静岡、長崎、大分、宮崎、鹿児島の各県では11月をピークとして10〜12月に多発している。

紅斑熱については千葉で2名、高知で8名、宮崎で1名、鹿児島で5名となっていて、月別発生数をみると、5月に2名、6月に2名、7月に1名、8月に3名、9月に6名、10、11月に各1名となっており、5〜9月に多発している(表1)。

2)感染推定場所、作業内容:つつが虫病では山地における森林作業、農作業、山菜・山芋採取などに際しての感染が多くみられ、紅斑熱においても山地での感染が報告されているが、感染推定場所および作業内容についての記載のないものが過半数あった(表2)。

3)年齢別、性別:つつが虫病患者の年齢は従来より高齢者に偏っている傾向にあるが、1995年も年齢不明を除いた全患者に対して60歳以上の患者が占める割合は54%であった。また、性別では男222名、女218名と差がなかった。

紅斑熱患者においても、つつが虫病と同様に高年齢層が多い傾向にあった。また、性差は認められなかった。

4)診断法:つつが虫病の血清診断は間接蛍光抗体法(IF)が 438例、免疫ぺルオキシダーゼ法(IP)が79例、補体結合反応(CF)が7例利用され、そのうち386例が陽性と診断されている。その他の診断法としては病原体分離が4例、臨床診断が50例で、合計440例がつつが虫病と診断された。

紅斑熱については、すべてIFによって血清診断されている(表3)。

なお、保留に関しては、つつが虫病、紅斑熱ともに、その多くは回復期血清の入手ができないための判定不能による。

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