Vibrio mimicus による食中毒−新潟県

1996年10月15日、新潟県北蒲原郡中条町の医師が「10月13日に同町産業文化会館で行った催し物の参加者の中で食中毒症状を呈した人を治療した」旨を所轄の新発田保健所へ通報した。これを受けて保健所が調査したところ、この催し物の参加者は、9グループ65人であったが、患者は共通の昼食弁当を食べた2グループ16人の中から男7人、女3人が発症した。患者の年齢は40〜60歳代8人、10〜20歳代が2人であった。潜伏時間は7人が6〜15時間で、残りの3人は15〜30時間であった。

症状は下痢がもっとも多く(100%)、3〜頻回の水様便、次いで多いのが嘔吐(80%)で、回数は2〜頻回、腹痛(60%)、発熱(37.5〜38.8C;40%)、脱力感、腹部膨満および胃痛(20%)が認められた。なお、下痢の激しい人が嘔吐も激しい傾向であった。

原因菌の検索では、V.mimicusが調理従事者1人、非発病者1人、患者3人の便から分離された。患者から分離された3株の逆受け身ラテックス凝集反応(デンカ生研)によるコレラ毒素産生試験は陰性であった。

原因施設の調査において、原因食品と推定された昼食弁当の献立内容は鮭粕漬、卵焼き、菊のひたし、麸の煮物、カボチャの煮物、ヒジキ詰薄揚、串カツ、キャベツ千切、シューマイ空揚、海老カレー味煮、シメジ御飯およびみそ汁であり、生食用魚介類は使用されていなかった。また、V.mimicusは調理器具のふきとり13検体からは分離されなかった。事件の発生原因は、当該施設で日常的に魚介類の調理が行われており、調理器具の消毒が適正に実施されていないことおよび調理従事者の検便で1人からV.mimicusが分離されていることから原因食品の弁当は調理器具あるいは調理従事者の手指等から二次汚染したことが推定された。わが国におけるV.mimicusによる下痢症の最初の報告例(篠川ら、1979)では分離株の毒素産生性テストは実施されていなかったが、本事例の分離株はコレラ毒素を産生しなかった。

新潟県新発田保健所 植木誠一郎 高木るみ子
新潟県衛生公害研究所 佐々木寿子 後藤公吉

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