エコーウイルス21型分離例について−島根県
島根県において1996年8月〜11月に近年分離のまれなエコーウイルス21型(E21)を分離したのでその概要を報告する。現在までにE21と同定された4例について臨床診断名等を表に示す。4例はいずれも県西部(江津市、浜田市)の患者である。
ウイルス分離にはRD、FL、AG-1、293E1細胞を用いた。CPEは293E1細胞4例、RD細胞3例、FL、AG-1細胞1例で認められ、AG-1細胞以外はいずれも接種後3、4日目でCPEが出現し、初代で分離可能であった。分離株の同定はプラック法で行った。デンカ生研社製エンテロウイルス中和用混合抗血清3(HIJK)、4(LMNO)号では混合Nでウイルスコントロールおよび他の4号抗血清と比較し25%程度プラックを抑制したものの3号抗血清と同程度のプラック数であった。シュミットプール血清(予研より分与)では、SP5で50%、SP13で30%程度プラックを抑制したためE21を疑い、E21単味抗血清(予研より分与)で中和試験を行ったところ40単位でプラックは完全に抑制された。
1996年、本県ではエンテロウイルスの大きな流行はなく、同時期に県西部ではCox.B1、2、4、E7、25が分離されており、E21はこれらのウイルスとともに散発的に無菌性髄膜炎、咽頭炎などの原因ウイルスになっていたものと思われる。
病原微生物検出情報によれば、E21は1987〜88年に福島県などで流行が認められているが、それ以降、分離報告はない。本県では過去に分離例がないことに加え、11月にも分離されていることより、今後の動向に注意が必要であろう。
島根県衛生公害研究所 飯塚節子 佐藤浩二 板垣朝夫