和歌山市の幼稚園・事業所で発生したSalmonella Enteritidis による大型食中毒事例

平成8(1996)年6月、和歌山市の20カ所の私立幼稚園において、園児、保母、父兄494 名および事業所11名、計505名のSalmonella Enteritidis(SE)による食中毒事例が発生した。6月12日、某幼稚園において園児100 名ほどが下痢などの症状を呈し、園を休んでいるという情報を得た。調査を進めると市内F社の給食をとっている20園のうち複数の園で同様の症状を訴える園児を確認した(表1)。

発症状況を表2に示した。初発は6月10日で大半は11〜15日に発症し、ピークは11、12日で全体の55%を占めた。6月8、9日は休園日であったので、10、11日の給食が疑われた。

症状は表3に示した。6月11日以外には給食のなかったT園でも5名( 1.3%)の患者が出ているので、11日の給食の中にもSEに汚染された食品が含まれていたものと思われるが、10日しか給食のなかったH園で 122名(35%)と多数の患者が見られたこと、また同じく10日しか給食のなかったF、G園でも患者がでていることから、今回の大規模集団食中毒事件の原因食は主に10日の給食にあるものと考えられた。

10日のメニューは表4のとおりで、I、II、IIIの3種がある。メニューIIIをとっている園では、患者の発生はなく、I、IIをとっている園で患者が発生していたことから、I、IIのメニューの中に原因食品があると推測した。I、IIのメニューに共通する食品の喫食状況は表5のとおりである。患者はいずれの食品とも高率に喫食しており、この調査結果から原因食品の特定は困難であった。しかし、10日にI園であった試食会でいり卵のみを食べた園児の妹2名が発症していることから、F社に対し、いり卵の製造状況を調査したところ、6月8日夕方に殻を割り、3つのバットに入れて冷蔵庫に保管し、10日午前5時ごろから30分間で80kgのいり卵を調理後、5個のプラスティック製コンテナに一時保存し、その日の昼食として各園に配達されたことがわかった。

F社の調理施設のふきとり、検食、食材および従業員の便について検査をした結果、割卵を保管したバット、いり卵の一時保存に使用したプラスティック製コンテナとまな板のふきとりおよび従業員1名の便からSEが検出された。

また、患者 183名中 131名の便からSEを検出した。分離されたSEのプラスミドプロファイル、ファージ型、薬剤感受性、AP-PCRのDNA 夕イプはすべて一致した。

以上のことから、今回の集団食中毒は卵を汚染したSEが冷蔵庫内で保管中に拡散し、調理後盛付まで一時保存したバット内で増殖したものと考えられた。

事後の7月8日〜19日にかけて、治療後あるいは未治療の園児等 1,390名の再検査を実施し、その結果 、233名(17%)からSalmonellaを検出した。そのうち 226名(16%)はSEであった。

和歌山市衛生研究所 山本 幾也 森野 吉晴 金澤 祐子 吐崎 修 上野 美知 松川 陽子

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