The Topic of This Month Vol.18 No.3(No.205)


サルモネラ 1994〜1996

厚生省統計情報部の「食中毒統計」年報によると、細菌性食中毒患者数は、1994年に29,513、1995年は22,329であり、1993年の19,089に比べ増加した。これらのうち、サルモネラによる患者の割合は1993年が36%( 6,954名)であったのに引き続き、1994年が49%(14,410名)、1995年が36%( 7,996名)であり、病因物質別では依然として第1位を占めている。1994年および1995年は事件数では腸炎ビブリオに次いで第2位となったが、1事件あたりの患者数は腸炎ビブリオがそれぞれの年で26および23名であるのに対し、サルモネラの方が70および45名と多く、これは従来の傾向と変わりなかった。

他方、全国の地研・保健所から報告されたサルモネラの検出数は、病原微生物検出情報で集計される病原菌のうちで最も多く、1986〜1995年のヒト由来のサルモネラ検出数の推移をみると、1986〜1989年に増加した後、多少の変動があるものの、その検出総数はほぼ横ばい状態が続いている(図1)。しかし血清型の推移ではSalmonella Enteritidisの増加傾向と、S.Typhimuriumおよびその他の血清型検出数の減少傾向が続いている。

この傾向はサルモネラ集団発生の原因となった血清型の分布からも明らかである。1993〜1996年に病原微生物検出情報に報告されたサルモネラ集団発生のうち、患者数10名以上の事件から検出された血清型は10〜12種類であった。そのうち、S.Enteritidis による集団発生事件数は、1993年41(55%)、1994年75(70%)、1995年69(71%)、1996年84(76%)であり、増加傾向が続いていることが示された(表1)。

S.Enteritidis の増加は、わが国においてヒトから高頻度に分離された上位15サルモネラ血清型からも明白である(表2)。S.Enteritidis のサルモネラ検出総数に占める割合は1988年の5%から1989年の24%への激増以来、年々徐々に増加して来た(本月報Vol.16、No.1参照)。1993年に47%と高率に検出された後、1994年56%、1995年47%と推移している。

さらに、国立予防衛生研究所に送付されたS.Enteritidisのうち集団発生事件由来の菌株のファージ型(PT)別結果は以下のとおりである(表3)。1990年〜1996年の全体的な傾向としては、PT1 が1992年に32%(35/110)に増加した後平均で41%の検出率を示し、PT4 は1990年に57%(26/46)に急増した後平均で40%を示す一方で、PT34は1990年に26%(12/46)であったものが次第に減少し、1996年には検出されなかった。したがって、PT1およびPT4の占める割合をあわせると1996年には84%に達し、両者のファージ型の菌株が蔓延している状態が推察される。しかしながら、散発事例および環境由来株のファージ型は多種類に及び、今後それらのファージ型の菌株が増加してくる可能性も否定できない。

S.Enteritidis の高い検出率が続く以上、その動向を知るうえでも疫学的情報を含めた詳細な情報収集が不可欠であろう。


Return to the IASR HomePage
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp



ホームへ戻る