アデノウイルス7型による急性呼吸器疾患の集団発生後の血清抗体調査−山梨県
1995年5月〜6月に山梨県の一高等学校の寄宿舎でアデノウイルス7型(Ad7)による高熱を伴う急性呼吸器疾患の集団発生があった。在寮者 636名中 310名(49%)が発症し、本邦ではまれなAd7の集団発生事例と考えられたので、その疫学調査の一部の結果について、本月報Vol.17、No.5に報告した。
今回は、上記の高等学校で、集団発生16ヵ月後に血清疫学的調査を実施したので、その結果について報告する。なお、この施設では、その後、冬季のインフルエンザ以外は目立った呼吸器疾患の発生がなかった。
集団発生時の急性呼吸器疾患の発症者53名、非発症者54名、計 107名の血清について、この流行で得られたAd7分離株に対する中和抗体(Ad7抗体)、およびアデノウイルス3型(Ad3)のプロトタイプ株に対する中和抗体(Ad3抗体)を測定し、その結果を表に示した。
今回のAd7抗体価は発症後40〜50日目の抗体価と比べると、約1/2に低下したものの、抗体価の持続が認められた。Ad7抗体保有者は、発症者では53名中50名(94%)で、非発症者では54名中15名(28%)であった。1994年の山梨県住民の抗体調査では、この年齢層には全くAd7抗体保有者がなかったことから、非発症者でAd7抗体保有者はこの集団発生期間に不顕性感染を受けた者である可能性が高いと考えられた。
次に、Ad7とAd3とは同じ亜群に属し、類似性が高いので、Ad3に対して免疫があればAd7感染症の発症を抑制することがあるかどうかについて検討した。表に示すように、発症者と非発症者のAd3抗体の保有率、平均抗体価には統計学的有意の差が認められなかった。したがって、今回のAd7感染症の発症の有無とAd3抗体保有とは明らかな関連性がないと考えられた。
山梨県衛生公害研究所 小澤 茂 山上隆也 渡辺由香里 町田篤彦 薬袋 勝
山梨県立中央病院 横山 宏