1996/97シーズン後期のインフルエンザB型ウイルスの流行一大阪府

大阪府における1996/97シーズンの流行は、1996年12月初旬のAH3 型に始まり、正月休暇を中心に比較的大きな流行が認められた(図1に示す前半のピーク)。その後、AH3 型も終息を示した1997年2月に入り、2月19日に採取された検体からインフルエンザB型が分離された。この分離株は予研インフルエンザセンターより分与された抗−B/三重/1/93−フェレット感染免疫血清により類似の抗原性のウイルスと同定された(以下この様な株をBワクチン型)。と同時にこの抗血清とはほとんど反応を示さないウイルスが数株分離され、PAP 染色、血球凝集性等からB型と推察されたので、過去の抗血清と交差HI反応を行い、表1に示すように1980年代後期の株と反応を示す結果を得た(以下この様な株をB変異型)。その後、この2種類の抗原性のB型ウイルスは大阪府下で並行して分離されている(図2)。このような現象は、時として、地域的な偏りによる原因が考えられるので、比較的検体数の多い大阪府下北部定点:Mと南部定点:Pにおける分離状態を比較した(図3)。最初、南部定点でB変異型の率が高く、約2週遅れて北部定点でもこの型が混在してきた。しかし侵淫が遅れた結果、4月(1997年14週)に入ってもB変異型が多数分離されている。これは、患者発生でみても、府下南部地域では3月中旬には流行も終息している(3月初旬から南部地域では学級閉鎖措置も多くとられ、B変異型が分離された)。一方、北部地域では立ち上がりも遅れ、定点の分離状況も考慮すると、流行が長期化する様相が推察されたので、新学期にむけ、サーベイ情報で注意を呼び掛けたが、この地域では、現在、すでに数校で学級閉鎖の報告がある。

以上のように、図1の流行後半はB型による流行であったが、その内容はBワクチン型の小流行に加え、B変異型の出現でピークを示したと考えられる。

このB変異型の抗原性については、現在免疫血清を作製中であるが、日本インフルエンザセンター根路銘氏からの私信で、B/Victoria/2/87系統に属し、ここ数年間ヒトの領域から消えていた新しい変異種との連絡であった。

そこで、今後の流行を予測するための抗体保有状況について検討した。図4に示すように1996年秋期に採血された血清についての測定結果では、小学生以下の年齢では抗体保有はなく、中学生以上でも保有率、抗体価ともに低いため、今後もB変異型ウイルスの動向には注目する必要がある。

大阪府立公衆衛生研究所ウイルス課
前田章子 加瀬哲男 奥野良信

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