愛知ウイルスが検出された胃腸炎集団発生−愛知県

愛知ウイルスは、1989年愛知県内で集団発生した胃腸炎の患者糞便から分離された。既知ウイルスの抗血清と反応しないため所属は不明であったが、遺伝子解析では新しい属のピコルナウイルスと考えられる。ELISAによる検索で、1987年〜90年の間に愛知県内で生カキが原因と推定された胃腸炎集団発生9事例のうち5事例13名から同抗原が検出され、6名はウイルス分離も陽性であった。1991年以降は検出されなかったが、本年(1997年)1月に発生した生カキによる胃腸炎の集団発生例から愛知ウイルスが分離されたので報告する。

患者数は10名で、下痢を訴えた者7名、腹痛4名、嘔吐8名、38℃以上の発熱7名であった。8名から採取された糞便は定法により処理し、電子顕微鏡による観察、PCR法によるSRSV(Norwalk virus類似株)遺伝子の検出、HeLa、RD-18S、Vero細胞を用いたウイルス分離、およびELISAによる愛知ウイルスの検出を行った。

に示したように8名中6名が電子顕微鏡により小型球形ウイルス陽性であったが、PCR法によるSRSV遺伝子の増幅は3名のみに限られた。ウイルス分離は、Vero細胞により4例が陽性で、1例はELISAで愛知ウイルスと同定された。他の3例は、HeLa、RD-18S細胞には CPEを起こさず、抗エンテロウイルス単クローン抗体(5-D8/1)とも反応しない点で愛知ウイルスと似ているが、同抗血清とも反応せず現時点では未同定である。愛知ウイルスのELISAにより8名中2名の糞便から同ウイルス抗原が検出され、1名は分離結果とも一致した。

今回の事例ではSRSVの検出率は38%(8名中3名)と低く、代わりに愛知ウイルスなど別の因子が検出され、3種類以上のウイルスが関与していたことが判明した。生カキでは種々のウイルスが同時に濃縮されるので、今回のような事例も有りうる。PCR法によるSRSVの検出率が低い場合、別の病原ウイルスも視野に入れる必要があろう。

愛知ウイルスの国内での存在が7年ぶりに確認された。その後、3月の集団発生事例でも1例陽性患者が存在したことから、本ウイルスの流行にも波があると考えている。愛知ウイルスの胃腸炎との関わりや程度については、疫学データが十分でない。ELISAによる検査を希望される機関に必要な試薬を分与していますのでご連絡ください。

愛知県衛生研究所
山下照夫 都築秀明 栄 賢司
小林慎一 鈴木康元

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