<速報>人から鳥インフルエンザウイルスA(H5N1) を分離
香港で本年5月、3歳男児からA(H5N1)型ウイルスが分離された。患者は5月11日に風邪症状が出現、15日に入院、16日にQueen Elizabeth病院に転院したが、肺炎とライ症候群の症状で21日に死亡した。この患者の咽頭材料からMDCK細胞(+トリプシン)を使ってA型インフルエンザウイルスが分離された。
この病院の検査室では、本年1月〜8月7日までに呼吸器疾患患者材料4,372検体から638株のインフルエンザウイルスを分離している。うち66%がA(H3N2)型、4%がA(H1N1)型、30%がB型であった。このうちの1株だけが亜型同定が困難であったため、米国、英国、オランダの研究所に送って同定を依頼し、H5N1であることが判明した(8月20日公表)。これはヒトからH5ウイルスが分離された世界最初の例である。
香港では4月から1カ月の間に養鶏場でニワトリが4,500羽死に、A(H5N1)型ウイルスが分離された。そこで養鶏場従業員および上記患者の家族の血清を採取してH5抗体を調べたが、全員陰性であり、このウイルスに感染した証拠はなかった。このウイルスの人→人感染は無いと考えられる。しかし現時点で、この患者がいかなる経路で感染したのかは不明である。
8月22日、香港で今後の対策を協議する国際的会合が開かれ、日本からは国立感染症研究所室長が出席した。このウイルスに対するサーベイランス態勢を強めることが合意された。厚生省は、感染研から国内73カ所の地方衛生研究所および中国南部の9カ所の監視ステーションに、H5ウイルス同定用抗血清および抗体測定用抗原を送ることを計画中である。
国立感染症研究所ウイルス1部
〃 感染症情報センター