パラインフルエンザウイルスの分離状況−横浜市

例年5月〜6月にかけパラインフルエンザウイルス(以下Paraと略)3型が多く分離される。1997年は6月初旬に集中して分離された。1995年1月〜1997年7月までの横浜市における分離状況について報告する。

横浜市内18区のうち6検査定点から、毎週3定点ずつ最大21検体の咽頭ぬぐい液について検査を行った。培養細胞はVero、HEp-2、MDCK、RD、G-Vero細胞である。Paraが分離されるのは主にVero細胞であったが、一部はHEp-2細胞でも分離された。Vero細胞の細胞維持液は 0.2%BSA 加Eagle培地にトリプシン(1単位/ml)を加えたものを用いた。ウイルス感染による細胞変性効果(CPE)は細胞の伸長化やsyncytium形成等であるが、不明瞭なものもあるので、感染の確認を0.5%モルモット赤血球による赤血球凝集試験および赤血球吸着試験(HAD)で行った。同定はデンカ生研の抗血清を使用し、赤血球凝集抑制試験(HI)または赤血球吸着抑制試験(HADI)で型別した。1995年1月〜1997年7月までの分離状況を図1に示す。Para 3型は毎年ほぼ同数分離され、季節も5月〜6月に集中していた。Para 2型は1年おきに流行し、1996年は10月に集中していた。Para 1型は冬季期間以外に平均して分離されるが6月〜10月に多い傾向であった。1995年1月〜1997年7月までにPara 1型40株、Para 2型17株、Para 3型78株、合計136株が分離され、これは同期間に分離されたウイルスの21%を占めた。年齢別分離状況は3歳以下でPara 1型45%、Para 2型47%、Para 3型85%と低年齢層からの分離が多かった。臨床症状では発熱が131例で96%(平均38.6℃)に見られ、上気道炎を含む症状が87例(63%)、上下気道炎症状16例、下気道炎症状11例であった(表1)。

1997年は7月までにPara 1型4株、Para 2型1株、Para 3型25株、合計30株が分離された。Para 3型は5月12日(第20週)〜6月9日(第24週)をピークに7月14日(第29週)まで毎週分離された。特に第24週はPara 1型の分離が重なってPara 3型8株、Para 1型4株と多かった。この週の3定点は横浜市内の北東部から南部の地域で図2の地図に示した。港南区でPara 3型5株(うちAdeno 1型との重複感染1株を含む)となり、この地域でかなり流行していたと推察される。また、鶴見区(Para 3型2株、Para 1型2株)や青葉区(Para 3型1株、Para 1型2株)でも分離されたことから、横浜市内で広範囲に流行があったと考えられた。臨床症状としては発熱が28例で93%に見られたが、発熱がなく左耳下腺腫脹のみでPara 3型が分離された1例があった。8歳7カ月の男子で流行性耳下腺炎の疑いであったが、3歳時にMMRワクチンを接種していた。この他に1例の唾液腺腫脹を含む症例からParaが疑われる株が分離されており、現在検査を行っている。

横浜市衛生研究所
川上千春 宗村徹也 七種美和子 野口有三 小林伸好 鳥羽和憲

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