<速報>山形県(置賜地方)におけるエコーウイルス9型による無菌性髄膜炎の流行
1997年6月〜7月末にかけて本県の置賜地方にある2つの検査定点病院より、発熱および頸部硬直など髄膜炎症状を主症状とする多数の無菌性髄膜炎(AM)患者の検査依頼があった。検査材料は咽頭ぬぐい液、髄液、便の3種類で、組織培養によるウイルス分離を行った結果、エコーウイルス9型(E9)を31株分離した。
今回、ウイルス分離に用いた細胞はRD-18S、Vero、HEp-2細胞で、このうちRD-18S細胞で最も感受性が高く、効率よく分離することができた。分離株の同定は、市販のプール血清および単味の抗血清を用いた中和試験法で行った。米沢市立病院から11症例11検体(咽頭2、髄液9)、公立高畠病院から25症例63検体(咽頭21、髄液22、便20)が送付された。全36症例中20症例で何らかの検査材料からウイルスが分離された。今回の検査材料による分離率は、咽頭拭い液で74%(17/23)と最も高く、便では55%(11/20)、髄液においては6%(2/31)と低かった。患者の居住地は隣接する米沢市、高畠町、南陽市の2市1町にまたがっていた。年齢層は3歳〜12歳の間で、そのうち3歳〜6歳が中心だった。また、この地方においてほぼ同じ時期に発生した、小児の急性上気道炎患者からもE9ウイルスを分離している。幸い8月に入りAMの患者報告数は急速に減少し、重篤な後遺症を残した患者も出ていない。なお本県では、1991年の夏、山形市において78例のエコーウイルス30型によるAMの流行を経験している1)。
1)山形済生館医誌(1992年第17巻第1号 p.33-36)
山形県衛生研究所
村田敏夫 青木洋子 村山尚子 片桐 進
高畠町立病院小児科 五十嵐悦雄
米沢市立病院小児科 岡田昌彦