保育園で発生した腸管出血性大腸菌O157:H7による集団感染事例−千葉県

事件の概要:1997(平成9)年7月4日、市内の医療機関から EHEC O157患者発生の届け出がなされた。また、患者と同じ保育園に在籍する他の4名の園児も同様の症状で入院検査中であることが明らかとなり、保健所は保育園を中心とした EHEC O157集団感染症発生の疑いで、調査および検査を開始した(表1)。初発患者発生は6月28日で、最終的な菌陽性者数は32名であった。その内訳は、保育園児24名(有症者22、非発症者2)、保育園職員4名(非発症者4)、園児家族4名(二次感染者、有症者2、非発症者2)であった。K保育園の園児数は0〜2歳児が30名、3〜5歳児が58名で、感染者数は3歳児26名中10名(38%)、4歳児14名中7名(50%)、5歳児18名中7名(39%)で、0〜2歳児には感染者がいなかった。0〜2歳児と3〜5歳児のクラスはそれぞれ1階と2階に分かれており、給食の調理および盛りつけも別々であった。有症保育園児22名に関する日別発生状況を図1に示す。

原因食品の検査:冷凍保存されていた2週間分の検食 186検体(調理済み食品81、食材 106)は、ノボビオシン加 mEC培地を用い、42℃で18〜20時間静置培養後イムノクロマト系キットによるスクリーニング検査を行い、陽性または疑陽性を示す検体について免疫磁気ビーズによる集菌を行った。分離培地は CT-SMACおよびクロモアガーを用いた。その結果、6月27日給食のメロンから EHEC O157が分離された。メロンの EHEC O157菌数を MPN法により測定したところ、43コ/gであった。メロンから分離された株の血清型はO157:H7、毒素型は VT1、 VT2両毒素産生型で、患者由来株と一致した。また、抗生物質感受性パターン(ABPC、TC、SM、CM、KM、NA、SXT、FOM感受性)およびG11プライマーを用いたRAPDによる遺伝子パターンも患者由来株と同一であった。XbaIを用いたPFGEパターンを図2に示す。一部の株で、200kb(メロン由来株および患者由来2株)または50kb(患者由来5株)に付加的なバンドが認められたが、メロンおよび患者由来株は同一株由来と考えられた。以上の知見は、喫食状況等の疫学調査結果と整合し、本事例は6月27日のメロンを原因食品とする集団食中毒であるとことが明らかとなった。なお、本事例由来株のファージタイプは21であった(感染症研究所による)。

今回の事例では、イムノクロマト系キットによるスクリーニングおよび免疫磁気ビーズ法を併用することにより、多数の食品・食材から効率よく、しかも迅速に原因菌を検出することができた。

千葉県衛生研究所
内村眞佐子 小岩井健司 岸田一則 久門勝利
依田清江  鶴岡佳久  水口康雄

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