和歌山市内の老人ホームにおけるVibrio cholerae O10による集団食中毒事例
1997(平成9)年7月、和歌山市内の老人ホームにおいて、患者12名のVibrio cholerae O10による食中毒事例があった。7月16日午前9時15分、まずホームの寮長より保健所に、昨夜半から下痢症状の者8名が市内病院で診察中であるとの電話連絡があり、同日午前11時に同院医師より食中毒の届出が出された。
発症状況は摂食者数72名中、男性5名(66〜84歳)と女性7名(76〜96歳)の患者数12名(発症率17%)、発症時間は7月15日23時〜翌16日6時の間、主症状は水様性下痢、発熱(37.1〜38℃)と腹痛で比較的軽症であった。
喫食調査の結果、外部から食品の持ち込みはなく、また給食の朝食はパンと牛乳と乳酸飲料のみであることから、昼食と夕食が原因と推測された。7月9〜15日の献立の検食51検体、食材6検体、水道水1検体、調理場のふきとり14カ所、患者便7検体(無症者2名含む)、調理員便6検体の計85検体について食中毒菌の検査を実施した。検査の結果、患者便5検体からV.cholerae O10(CTおよびTDH 陰性)が検出され、他の検体からは食中毒菌は検出されなかった。喫食調査では、患者は多種類の食品を高率に喫食し、しかも食材に高率に使用されていた魚介類からもV.cholerae O10は検出されず、今回の調査および検査結果から原因食品の特定はできなかった。
和歌山市衛生研究所
吐崎 修 金澤祐子 上野美知 北口三知世
松川陽子 森野吉晴 旅田一衞
国立感染症研究所 島田俊雄