保育園で発生したSalmonella Enteritidisによる食中毒事例−長野県

1997年7月17日に長野県飯田市内の病院から、所轄保健所に食中毒患者を診察した旨の通報があった。保健所の調査により、患者の通園している保育園の園児および職員も同様に食中毒様症状を呈していることを確認した。有症者らの共通の食事が保育園の給食だけであったことから、保育園の調理施設のふきとり、検食、食材の細菌検索および検便を実施した。その結果、喫食者 152名中63名の便からSalmonella Enteritidis(SE)を検出した。また、7月10日の検食のマカロニサラダからもSEを検出した。便および検食から検出されたSEについて生化学的性状検査、薬剤感受性試験、ファージ型別(国立感染症研究所に依頼)等を実施したところ、すべて同一パターンであり、ファージ型は1型であった。以上のことから、保育園の給食を原因とするサルモネラ菌による食中毒と断定した。

検便の細菌検査結果を表1に示したが、有症者のうち検査実施者の86%からSEが検出され、無症者においても34%が陽性であり保菌者と判明した。

図1に日時別患者発生状況を示した。初発は7月11日で、大半は13日〜17日であり約1週間にわたって平均して患者発生が認められた。

有症者の主な症状は下痢(83%)、腹痛(57%)、発熱(69%)、嘔吐(17%)等であった。

保育園の給食について調査したところ、7月10日は豆腐ハンバーグとマカロニサラダであった。調理工程としては豆腐、挽き肉、卵等の材料を鍋に入れ、こねたあと成形しハンバーグを焼いた。その際使用した鍋を40℃程度の温湯で洗い流した後、鍋にゆでたマカロニサラダの具材を入れ、市販のマヨネーズで和えてサラダを作った。豆腐ハンバーグおよび挽き肉からはサルモネラ菌は検出されなかったが、豆腐ハンバーグに使用した卵は、調理前日の午後保育園に届けられ、調理台の上に室温で放置されていたものであった。保育園の調理室は洗浄用シンク、水きり台、調理台が集中していた。

これらのことから、今回の食中毒事例の要因として食品中のサルモネラ菌による直接汚染が原因と推定されるが、調理設備の配置状況等から調理環境中に生存したサルモネラ菌による二次汚染の可能性も否定できない。

長野県衛生公害研究所 小山敏枝
長野県飯田保健所
宮島喜文 藤本和子 中村安満 山口哲弘

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