消化性潰瘍の原因に関する知識、1997年3月〜4月−米国

アメリカでは推計2千5百万人が生涯のうちに消化性潰瘍(peptic ulcer disease;PUD)を患う。PUD症例の大部分(>90%)がHelicobacter pylori 感染による。この関連性は1983年に最初に報告されているが、1995年では、民衆の大半(72%)に知られていなかった。CDCでは、H.pylori感染と PUDの関連に対する認識を高めようとして、エージェンシー、研究所、企業などと協力してキャンペーンを行っている。このキャンペーンは感染予防週間に合わせて1997年10月19〜25日に開始される。これに先立ち、1997年初頭にPUDの原因に関する知識調査を行った。調査は18歳以上の成人 3,064人に対して行われ、 2,512人(82%)から回答が得られた。その結果、潰瘍は過度のストレスによるものと考えている人が約60%、香辛料の利いた食事の摂取によるものと考えている人が約17%で、細菌感染が原因と考えている人は約27%であった。ストレスを原因と考える傾向は、18〜24歳の人(78%)および年収$15,000未満の人(65%)で最も高かった。同様に香辛料の利いた食事を原因と考える傾向も上記2グループで最も高かった(それぞれ33%および26%)。一方、感染によると考える人の割合は、18〜24歳12%、55歳以上33%であり、年齢とともに増加していた。

アメリカでは年間約 6,500人が PUDが関連して死亡している。これによる治療および労働力の低下等による直接的・間接的損害は1年で60億ドルに昇るとみられている。1983年にPUDとH.pyloriとの関連が示されて以来抗生物質による治療法の開発が進んでおり、確立された治療法による治癒率は70〜90%となっている。こうした効果的な治療法の開発によりPUDは慢性疾患としてではなく治癒可能な感染症という新しい捉え方が可能となっている。1994年および1996年の調査では、約90%の医師がH.pyloriとPUDとの関連について知っていたが、潰瘍の症状に対し、H.pyloriの検査をせずに胃酸分泌抑制剤の投与を行っていた医師が約50%いた。これに対し、消化器系の専門医ではそのような治療を行っていたものは約30%であった。こうした報告は、今回の調査結果と同様、民衆および医療機関に対し、H.pyloriとPUDとの関連について、より徹底した教育が必要であることを示唆している。CDCではキャンペーンの一環として、今月、テレビやラジオによる放送を行うとともに、治療法に関する消費者のための教育冊子および情報をヘルスケアプロバイダーに送付している。

(CDC、MMWR、46、No.42、985、1997)

今月の表紙へ戻る


Return to the IASR HomePage
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る