小児科定点における散発性SRSVの検出状況−愛媛県

SRSVは非細菌性集団食中毒を起こす主要なウイルスとして知られているが、また、毎年晩秋から初冬にかけて流行する嘔吐下痢症の主要原因でもある。SRSVの地域での流行が環境を汚染し、食品や飲料水を介して食中毒が発生すると考えられるので、SRSVの地域流行の実態解明がウイルス性食中毒対策にも重要である。当所では松山市の1定点小児科医院外来で散発性の急性胃腸炎患者から糞便を採取し、主に電子顕微鏡法(EM法)と細菌培養法による継続的病原検索を行ってきた。今回はSRSVのRT-PCR(AndoらのSRプライマーセット、斎藤らのYURIプライマーを使用)および千葉株、MX株の検出ELISA等を併用し、SRSVの流行の疫学的検討を行ったので報告する。

1.EM法による散発性胃腸炎患者からのSRSV検出状況:1989年1月〜1997年6月の間に採取した3,479件の糞便から、EM法でSRSVが204例(5.9%)検出された。SRSVはロタウイルスに次いで2番目に多かった。季節的には11月〜4月の間に年間の82%が検出され、特に11月と12月に集中していた。

2.EM法でSRSV陽性例のRT-PCRとELISA:EM法でSRSV陽性の115例のRT-PCRの結果をに示した。SRプライマーで66例(57%)、YURIプライマーで69例(60%)が陽性であった。いずれか一方が陽性例は76例(66%)で、EM法で陽性であっても、その約30%はRT-PCRで検出できなかった。特に古典的カリシウイルス様形態を示す検体はRT-PCRでは27例中18例約70%が陰性であった。また、SRプライマーではGenogroup1(G1)とGenogroup2(G2)の群別が可能で、表のとおりG1が8例、G2が58例であった。このことは散発的に流行しているSRSVはG2が圧倒的に多いことを示している。

G1群に属する千葉株検出のELISAではSRSV陽性115例のうち5例が陽性で、この5例はすべてG1であった。G2群に属するMX株のELISAはSRSV陽性50例中6例(12%)が陽性で、他の多くのG2群の検体とは反応しなかった。これらのことは、近年流行のG1はほとんど(5/8 63%)が千葉株類似株であり、一方G2群では多様な血清型株が流行していることを示唆している。

3.1995/96シーズンのSRSV流行状況:に1995/96シーズンの感染症サーベイランスの届出患者数とウイルス検索結果を示した。SRSVとロタウイルスの流行時期がずれており、11月、12月の患者のピーク時には、SRSVが多く検出されたがロタウイルスは全く検出されなかった。また、この時期に患者数の動向に合わせて増加した病原因子は細菌を含めてSRSV以外には認められなかった。晩秋の嘔吐を伴う急性胃腸炎の主要原因としてSRSVが極めて重要であることを再認識させられた。また、RT-PCRを併用するとEM法で陰性の検体からSRSVが検出され、SRSVの流行時期には10%〜20%程度の検出率の上昇がみられた。これらのことから、SRSVの検査にはEMとRT-PCRの併用が望ましいと考えられた。

愛媛県立衛生研究所
大瀬戸光明 高橋一博 呼石弘子
石丸小児科医院 中野省三 石丸啓郎

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