コクサッキーウイルスA12型の分離−島根県
1997年9月〜10月にかけて松江市の小児から5株のコクサッキーウイルスA12型(CA12)を分離した。症状は表に示すように口腔内の小水疱をともなう咽頭炎であり、かならずしも典型的なヘルパンギーナではないようである。
国内でのCA12の分離例は極めてめずらしく、島根県では1992年に咽頭炎あるいはヘルパンギーナから3株(浜田市)分離されているが、他に国内での報告例は見当たらない。
1992年当時に測定した小児血清の80%プラック減少中和抗体保有率は1歳10%、2歳37%、3歳35%、4歳64%、5歳31%、6〜10歳23%と比較的感染既往者が存在するものの、普遍的に流行するCA4の44〜89%に比べると低率であり、CA12の病原性は不明であるが、散発的な感染発症で経過している可能性も考えられる。そして、分離報告例がない最も大きな原因として他のCA群でみられるような典型的なヘルパンギーナに至らず咽頭炎を主体に経過することが哺乳マウス(SM)への接種頻度を少なくしている可能性、また、散発的な発生があり分離がなされたとしても流行を繰り返すCA群以外では抗体の入手、確保の問題もあり、同定不能あるいは未同定で処理されているケースも考えられる。
我々がおこなっているCA12の分離同定の過程を示すと、原則として培養細胞でCPEのみられなかったヘルパンギーナ、手足口病、咽頭炎、発疹症由来の材料は生後24時間前後のSM皮下に接種し、観察10日間に発症した感染SM乳剤を24穴マイクロプレートに培養したRD-A30細胞を用い、 1.5%メチルセルロースMEM重層下でプラック中和をおこなっている。通常は流行のみられる抗CA2、4、5、6、10型マウス腹水で中和同定をおこない、この操作で型別できない場合は抗CA1、3、8、そして12型マウス腹水での中和を試みている。
今回のCA12分離株はこれらの操作を経て同定したものであり、WHO レファレンス抗CA12型サル血清(感染研・萩原昭夫先生より分与)、CA12型標準株抗マウス腹水(自家製)および1992年に分離したCA12型(3033-92)の抗マウス腹水でよく中和される。
また、CA12型は哺乳マウス以外の培養細胞(Vero、AG-1、FL、293E1等)での増殖はみられない。しかし、分離株は他のCA群分離株と同様にSMを通過することによってRD細胞にCPEを発現する。
島根県衛生公害研究所
板垣朝夫 飯塚節子 佐藤浩二
飯塚小児科医院 飯塚雄哉
西野小児科医院 西野泰生
小池医院 小池茂之