1996年つつが虫病・紅斑熱様患者集計報告

衛生微生物技術協議会
検査情報委員会
つつが虫病小委員会

1996年のつつが虫病・紅斑熱様患者集計を行った。32都県(表1)の507件の調査票のうち兵庫県のものは愛媛大学医学部より、徳島県のものは同県の馬原医院より、その他は地方衛生研究所より送付されたものである。

その結果、つつが虫病患者数(陽性例)は29都県で386名、紅斑熱患者数(陽性例)は6県で14名であった(表2)。つつが虫病患者数については1993年の573名、1994年の478名、1995年の424名、そして1996年の386名と減少傾向を示している。

1)つつが虫病・紅斑熱の県別、月別発生状況:つつが虫病が多発している県としては秋田、千葉、宮崎、鹿児島などであり、月別発生については東北地方の各県と新潟、長野県等が5月をピークとして4〜6月に多く、千葉、神奈川、岐阜、大分、宮崎、鹿児島の各県では11月をピークとして10〜12月に多発しており、例年と同じ傾向である。

紅斑熱に関しては千葉で2名、兵庫で3名、島根で2名、徳島で3名、高知で2名、鹿児島で2名、合計14名が報告されている。月別では8月に多く、5〜9月の間に発生している(表2)。

2)感染推定場所・作業内容:つつが虫病では山地における森林作業、農作業、山菜等の採取、レジャーなどに際しての感染が多くみられているが、これも例年と同じ傾向を示している。

紅斑熱についても同様に山地における感染の多いことが示されている(表3)。

3)年齢別、性別:つつが虫病患者の年齢分布は従来より高齢者に多い傾向にあるが、1996年においても、年齢不明を除いた全患者数に対して60歳以上の占める割合は約60%であった。また、性別では男性204名、女性182名であった。

紅斑熱患者の場合は60歳以上の占める割合は50%であり、性別では男性5名、女性9名であった(表4)。

4)診断法:つつが虫病の血清診断法としては主として間接蛍光抗体法(IF)が使用され、ついで免疫ぺルオキシダーゼ法(IP)であり、補体結合反応(CF)はわずかに利用されている。その他の確定診断法としては病原体分離もあるが、臨床診断(診断・届出)のみの報告もある(表5)。

紅斑熱に関しては、つつが虫病との鑑別が必要なために、すべて紅斑熱とつつが虫病のリケッチア抗原を併用したIFが利用されている(表5)。

なお、保留に関しては、つつが虫病、紅斑熱ともに、その多くは回復期血清の入手ができないための判定不能による。

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