Mycoplasma pneumoniaeの菌型とその出現の動向
近年、M.pneumoniaeはP1タンパク質の遺伝子を指標にしてI型とII型に分類できるようになった。P1タンパク質はM.pneumoniaeの細胞表面に存在し、感染時に宿主細胞へ吸着するのに働いている。
神奈川県の結核・感染症サーベイランスの定点医療機関で異型肺炎と診断された患者より分離されたM.pneumoniae株をPCR-RFLP法でI型とII型に型別した。この結果を図1に示した。過去20年間の分離株を見ると、1976年の分離株はI型菌が多くを占めていたが、1979〜1980年頃にはII型が多くなっていた。80年代にはI型菌の分離が増加し、1985年以降数年間の分離はほとんどがI型菌となっていた。しかし90年代になると再びII型菌が増加し、現在はII型菌ばかりが分離されるようになっている。全体的に見るとこの調査では、肺炎の原因となるM.pneumoniaeはI型菌とII型菌が交互に出現してくるように観察された。
このような現象がマイコプラズマ肺炎で一般的に見られるものなのかは現時点で不明であるが、分離菌の型の変化とマイコプラズマ肺炎の周期的流行の関連に興味がもたれた。神奈川県では1980、1984、1988年の4年間隔でマイコプラズマ肺炎の流行があったことが確認されている。しかし、この流行年とI型、II型菌の出現状況に単純な関連は見られなかった。今後I型菌に感染した患者とII型菌に感染した患者の免疫像なども考慮した検討が必要と考えている。
神奈川県では現在分離されるM.pneumoniaeはすべてII型菌になっているが、近い将来に再びI型菌が出現する可能性が考えられるので、今後の詳しい観察が必要である。また神奈川県と離れた地域でも同様な調査が行われ、比較検討されることが望まれる。
国立感染研・安全性研究部
見理 剛 佐々木次雄
神奈川県衛生研究所 岡崎則男