SalmonellaEnteritidisによる死亡例の報告

食中毒の原因菌としてサルモネラは、腸炎ビブリオと並んで重要な位置を占めている。全国の地方衛生研究所・保健所から報告されたサルモネラの検出数は、病原微生物検出情報で集計される病原菌のうちでもっとも多い。血清型では従来S.Typhimuriumがもっとも多かったが、最近ではS.Enteritidisの増加傾向が明らかである(本月報Vol.18、No.3、1997)。

S.Enteritidisによる散発死亡例の発生も本月報に報告された。東京(Vol.17、No.11)、大阪(Vol.18、No.3)、山梨(Vol.18、No.11)の3例の他に、最近札幌からも1995年に経験された症例の報告があった(NTT札幌病院・山田 哲)。年齢はそれぞれ14歳、59歳、53歳、43歳で、いずれも基礎疾患のない健康な人たちであった。2例は発症から2日以内、2例は6〜10日で死亡しているが、いずれも下痢症状の悪化からの経過は急速であり、急性死の様相を呈している。血液からサルモネラが分離されたのは1例のみで、1例は消化管内容物から、その他は便から菌が分離されている。2例は割卵後長時間室温に放置されたと思われる生卵、1例は卵サンドイッチおよびさば寿司が原因食品として疑われているが、1例の原因については不明である。すべての例につき、急性死とサルモネラの因果関係について明らかになっているわけではないが、本来自然治癒傾向の強いサルモネラ感染症の中に死亡を含む重症例が存在することは、臨床的・細菌学的に今後注目をしておく必要があろう。また一般には大腸菌O157が主な関心となっているが、S.Enteritidis感染についても、原因として多い鶏卵の汚染に関する把握、消費者への啓発などが、今まで以上に重要であると思われる。

国立感染研・感染症情報センター 岡部信彦

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