東京都葛飾区周辺地域での麻疹流行

東京都葛飾区医師会の定点観測では、1997(平成9)年14週(3月30日)〜35週(8月30日)にかけて亀有・立石地区を中心に 103人/19定点の麻疹患者の発生が報告された。

同期間に当院を受診した麻疹患者98例の年齢分布は1歳未満26例、1歳28例、2〜6歳35例、7〜12歳8例で、2歳未満の小児が56%を占めた。1歳未満の最年少は5カ月児(母親が麻疹罹患後発病)で、ほかに6〜7カ月児7例、8〜9カ月児7例、10〜11カ月児が11例であった。

感染ルートについては18例が同胞・母子例であること、約半数が潜伏期間(7〜14日間)に当院の受診歴を有していることから家族内および院内待合室での感染が重要と思われた。

ワクチン既接種にもかかわらず発病した姉からの感染で発症した12カ月児が、急性脳症を合併し死亡している。Vaccine failureは本例の姉以外にスチーブンスジョンソン症候群を呈した6歳児でみられた。本患児では血清麻疹IgM抗体価の上昇が認められたが、経過中、咳嗽、コプリック斑はなく修飾麻疹と考えられた。

短期間であるが、周辺地域の複数の保健所で定期健診児を対象に麻疹ワクチン接種率を調査したところ、1歳6カ月児で50%、3歳児でも82%にすぎなかった。

今回の流行でも2歳未満の患児が多いことから1歳児の早期にワクチン接種を行うこと、および流行時には1歳未満の小児についても積極的に接種を行う必要性を痛感した。またワクチン接種に対する保護者への啓発とともに公的機関による年齢別接種率のモニターが不可欠と思われた。

慈恵医大青戸病院小児科
臼井信男 宍倉章浩 笹本和広
葛飾区医師会公衆衛生部
感染症サーベイランス班 鈴木健一

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