アデノウイルス7型の分離状況−川崎市
川崎市では1996年、5月にアデノウイルス7型(Ad7)が初めて分離され、計5名の散発例からの分離であった。1997年は市内幼稚園での流行を含め、3〜12月までに合計40名から分離された。
検体は主に咽頭ぬぐい液で、そのほかに糞便、髄液が搬入された。ウイルス分離にはCaCo-2、 Vero、 HEp-2細胞を使用し、 CPE確認後アデノウイルス中和抗血清(デンカ生研)を用いて中和試験を行った。なお、中和試験にはCaCo-2細胞を使用した。
Ad7の1997年月別の分離状況について図に示した。3〜5月にかけてAd7は散発的に分離された。小児科サーベイランス定点において、6月中旬頃から咽頭結膜熱の患者が増加し始めるとともにAd7の分離数も増加した。その流行時(6月20日〜8月27日まで)にはAd7が23名から分離された。疫学調査の結果、そのうち7名が川崎市内の同一幼稚園の児童で、その園児の兄弟2名からも分離された。その後、9月、10月にはAd7は分離されなかったが、11月に3名、12月に5名の患者から分離され、冬期においても流行が認められた。
年齢別の分離状況は、1歳未満4例、1歳2例、2歳4例、3歳4例、4歳6例、5歳6例、6歳7例、7歳以上7例で、幼稚園に通園している4〜6歳までの年齢層での流行例が比較的多くみられた。
症状別では40例中38例(95%)において呼吸器系の疾患が認められ、それに眼疾患を併発したものが15例(38%)、胃腸炎を伴うものが13例(33%)であった。また、呼吸器系疾患の認められなかった患者2名の臨床症状はともに無菌性髄膜炎であったが、ウイルスは糞便から分離されたものの髄液からは分離されなかった。
Ad7感染時の特徴として、最高発熱が高く、発熱が持続する傾向がみられた。各患者の最高発熱は38.0〜41.2℃で、40℃以上の発熱を呈した患者が22名(55%)認められた。Ad7が分離された入院患者の有熱期間(37.5℃以上)は3〜20日間(平均8.4日間)続いた。下気道炎は13名(33%)でみられ、特に1歳以下の6例ではすべての患者で下気道炎を併発し、そのうち、3名においては重度の肺炎を引き起こした。その3名の患者の主な臨床症状を表に示した。3名とも熱が高く、有熱期間は10日以上に及んだ。臨床検査所見では低蛋白血症、貧血、血小板の減少がみられ、 CRP、 LDH、 CPK ともに高値を示した。骨髄穿刺の結果、ウイルス関連血球貪食症候群(VAHS)を呈した患者は認められなかった。
Ad7の報告は全国的に増加傾向にあり、多彩な臨床症状の報告も多くみられる。川崎市において1997年に分離されたアデノウイルスは72例で、そのうちAd7は40例と半数以上を占めた。季節的にも夏期だけでなく11月、12月の冬期でも流行が認められるなど年間を通じて分離されている。臨床症状は他の呼吸器系ウイルスに比べて、重症例が多く、特に低年齢では注意が必要である。
川崎市衛生研究所 清水英明 平位芳江
川崎市立川崎病院小児科 中井千晶
日本鋼管病院小児科 三田村敬子