小学校でのアデノウイルス7型の流行−滋賀県
1997年10月20日、S小学校で4年生4クラスのうち1クラスで欠席者が多く、学級閉鎖について検討している旨の連絡が、市教育委員会から所轄保健所に入った。欠席者は13日頃から目立つようになり、16日から毎日5〜7名あった。欠席者の主症状は「発熱」で、他の症状については情報がなかった。保健所ではインフルエンザ様疾患のほか、SRSVなど消化器系疾患についても視野にいれて調査に入った。
聞き取り調査の結果、消化器症状は主症状と考えにくく、また、溶連菌については調査した13名中2名が医療機関で検査を受けていたが、いずれも陰性であった。このため、7名の患者についてうがい液を採取しウイルス分離を試みた。培養にはMDCK、 HeLa、 RD-18S、 Vero、 FL、 およびB95aの各細胞を用いた。インフルエンザウイルス、エンテロウイルスは分離されなかった。7名のうち3名の材料からHeLaで3代目およびFLで2代目にアデノウイルス様CPEが出現し、中和法でアデノウイルス7型と同定された。
10月20日時点における調査結果:有症者の症状別、日別発病状況を図1に示した。約1週間の間に当該クラス33名のうち13名が発病し、発病日は10月13日および16日に多かった。これら有症者の症状を表1に示した。発熱以外に最も多かったものは、咽頭痛の11名、次いで頭痛の8名で、胃腸症状は半数にみられた。発熱では最高体温は39℃前後に多く分布していた。性別による発症者数を表2に示した。女子の発病率が50%と男子の23%に比べて高かった。家族内の有症者の有無では、7家族9名に有症者があったが、このクラスで最も多かった症状の「咽頭痛」は3家族4名にみられた。これら有症家族は年下の兄弟ばかりでなく、父母、祖父というのもあった。
滋賀県立衛生環境センター
横田陽子 大内好美 吉田智子 田崎正善
大津保健所 尾本由美子 辻 元宏