造園業者に発生したLegionella longbeachae重症肺炎の1例

1996(平成8)年7月10日に肺炎で入院した52歳の男性は、入院当初より低血圧のショック症状を示し、レジオネラ肺炎が疑われて治療されたが、肺の陰影は急速に広がって入院第13病日に死亡した()。患者は10年来造園業に従事しており、グアムにゴルフ旅行した後に発症していた。患者から分離された菌株は、国内市販血清と反応せず、DNAハイブリダイゼーションテストによりLegionella longbeachaeと判明した。さらに米国CDCの検査で血清群1と確定された。

これまで日本ではL.longbeachaeの感染事例は抗体陽性であった1984年の入江誠治らの報告があるが、今回初めて該菌が分離された。L.longbeachaeによる肺炎は、特にオーストラリアに多く、1988〜1989年の南オーストラリアの集団発生では23症例報告されており、そこで使用される腐葉土などの植物性堆肥との関連性が指摘され、造園との関わりが深い。ヨーロッパではピート(泥炭)が使用されており、腐葉土は園芸にあまり使用されていないのでL.longbeachae感染は稀である。腐葉土中には多くの微生物がいるが、70℃以上に加熱するとレジオネラ感染を妨げるといわれている。なお、今回の患者は海外旅行後に発症しているので、この造園の際に使用していた植物性堆肥が原因か、あるいは海外での感染かは今のところ不明である。

神戸市立中央市民病院呼吸器内科
岡崎美樹 梅田文一
琉球大学第一内科 小出道夫 斎藤 厚

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