新しい狂犬病ワクチンのヒトに対する有用性−米国

1997年10月20日、米国FDA は、新しい狂犬病ワクチンを暴露前と暴露後免疫に使用することを認可した。この鶏胚細胞培養(PCEC:purified chick embryo cell culture)ワクチン(登録商標:RabAvert)は、Chiron Behring GmbH and Companyによって製造されている。ウイルス暴露前後に使用可能なこのPCECワクチンが新たに認可されたことにより、既存のワクチンいずれかに過敏性を持つ人にとってワクチン選択の幅が広がった。また、鶏胚細胞を使用してワクチンを作製しているが、鶏細胞蛋白に対する抗体はワクチン接種者で検出されていない。

PCECワクチン以前に、米国ではHDCV(human diploid cell vaccine)とRVA (rabies vaccine adsorbed)の使用が認可されている。前者は、human diploid cellを用いて固定毒化Pitman Moore株を使用しており、後者はリーサスモンキー胎仔肺のdiploid cell lineに順化したKissling株を使用している。

PCECワクチンは、現行の Advisory Committee on Immunization Practice ガイドラインにおいて安全かつ免疫原性のあるワクチンであることが示されている。製造業者からの資料によると、RabAvertは鶏繊維芽細胞の初代培養細胞で固定毒化low egg passage(LEP)Flury株を増殖させ、無菌的に凍結乾燥させたワクチンである。ウイルスは組織培養液から細胞残渣を除去した後、β-propiolactoneにて不活化し、ゾーン遠心法により精製・濃縮される。その後、安定剤を加えて総量1ml(少なくとも 2.5IUの狂犬病ウイルス抗原を含む)にした後に凍結乾燥される。ワクチンには防腐剤は含まれておらず、溶解後は早急に使用しなくてはならない。また、ワクチンは筋注以外には使用できない。

製造業者は、PCECを追加接種として使用した際、初回接種時に使用されたワクチンにかかわらず、IgEを介した過敏反応を起こすことなしに、確実に抗体の既往反応が起こることも報告している。HDCVやRVAと同じように、PCEC使用により腫脹、硬結、発赤のような局所反応をともなうことがあり、PCECワクチンには動物性副産物、抗生物質、ヒト血清アルブミンが微量に含まれているので、全身性のアレルギー反応が起こりうるし、実際にそのような報告もなされている。

IASR編集委員会註:本邦では1980年よりHEP Flury株を鶏胚培養細胞を用いて増殖させたワクチンが使用されている。

(CDC、 MMWR、 47、 No.1、 12、 1998)

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