岡山県における無菌性髄膜炎患者からのエコーウイルス30型の分離 1997〜1998年

1997年7月中旬から始まった岡山県における無菌性髄膜炎患者からのエコーウイルス30型(以下E30)の分離は、通常は無菌性髄膜炎の非流行期といわれる冬季の1998年1月まで続き、例年のエンテロウイルス分離状況と全く異なる様相を呈した。以下にその概要を示す。

1997年7月〜1998年1月の間に採取された無菌性髄膜炎患者98名(分離材料:髄液88名、咽頭ぬぐい液7名、髄液と咽頭ぬぐい液3名)からエコーウイルス30型 101株が分離された。E30の分離は岡山県感染症発生動向調査事業では1993年以来である。1997年1月〜1998年3月の岡山県感染症発生動向調査事業における無菌性髄膜炎患者発生報告数と採取月別E30分離状況を表1に示す。県内でのE30の分離は、7月中旬採取の髄液に始まり、10月にピークの32株に達し、1998年1月中旬採取の髄液からの分離を最後に途絶えた。分離株数の増減は患者報告数の増減とほぼ一致していた。

E30が分離された患者年齢は、0歳5名、2歳11名、3歳9名、4歳10名、5〜9歳54名、10〜14歳5名、不明4名。性別は男71名、女27名(表2)であった。このうち、家族内感染と考えられる例が3例みられた。

ウイルス分離にはFL、RD-18S、Veroの3種の細胞を使用したが、今回E30が分離された咽頭ぬぐい液10件、髄液91件では、FLとRD-18Sで分離されたもの32件、FLのみで分離されたもの69件で、Veroでは分離されなかった。

中和試験で、分離株は中国四国エンテロウイルスレファレンスセンター(愛媛県立衛生研究所)より分与されたEP95の5と6で中和され、国立感染症研究所より分与された抗E30単味血清および1991年岡山県内分離株に対するモルモット抗血清20単位で容易に中和された。しかし、デンカ社製の抗E30単味血清20単位では中和されず、同社製のエンテロウイルスプール血清でのCPE 抑制状況は、株によってやや異なるが、MとN、Oのうち1または2種で抑制される傾向であった。

E30は1989〜1991年に全国的に大流行、岡山県でも1990〜1991年に流行し、多数の無菌性髄膜炎患者から同ウイルスが分離された。今回分離されたE30は、デンカ社製のエンテロウイルスプール血清でのCPE 抑制状況、同社製の抗E30単味血清20単位では中和されないこと、および1991年県内分離株に対する抗血清で中和されることから、1990〜1991年の分離株に類似した抗原性を有していると考えられた。

岡山県環境保健センター
濱野雅子 葛谷光隆 藤井理津志
小倉 肇 森 忠繁

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