シンガポールのマラリア 1992〜1996年
1982〜1986、1987〜1991、1992〜1996年の各5年間について、マラリア年間発生数の平均を比較したところ、 208例、 277例、 306例と増加していた。1992〜1996年には、1,532例が報告され、その92%が輸入例だった。三日熱マラリアが81%、熱帯熱マラリアが17%であり、死亡例は5例だった。人口10万対発生率は10.5であり、25〜34歳では人口10万対20.6と最も高い値を示した。また、 5.1:1の割合で男性が女性より多かった。
輸入例の大部分は、インド亜大陸(58%)と東南アジア(36%)からであった。アフリカからの輸入例は全体の3%を占め、そのほとんどが熱帯熱マラリアだったが(67%)、他地域では主として三日熱マラリアだった(82%)。輸入例の75%は、入国後4週間以内に発症した。過去5年間の輸入例のうち、シンガポール住民は24%のみで、41%は外国人労働者、17%は旅行者であった。外国人労働者の患者に占める割合は、1992年の25%から1996年の44%に増加した。流行地で感染したシンガポール住民のうち、確実に予防内服を行っていたのは 4.4%のみだった。また、過去5年間に多くの局地的な集団発生が報告され、最近の集団発生では、発生源の外国人労働者が発見された時、既に周囲に感染が拡がっていたことが明らかとなった。
シンガポールでは、少数ではあるが2種類のマラリア媒介蚊(An.maculatus、An.sundaicus)が依然として存在する地域があり、マラリア流行国から多数の外国人労働者や旅行者が入国するため、マラリアの再流行に注意が必要である。
(WHO、 WER、 73、 No.14、 101、1998)