<速報> コクサッキーウイルスA3型の分離−大分県
病原微生物検出情報(Vol.17、No.9)および国立感染症研究所からの情報によると、コクサッキーウイルスA3型(CA3)は、1982年〜1997年の間にわずか 130株しか報告されておらず、本県においても、1992年に1株分離されたのみで、分離報告の極めて少ないウイルスである。
ところが、本県では、今年の4月初め〜5月15日までに、県内の医療機関から集められた咽頭ぬぐい液よりCA3を8株分離同定した。
分離した患者の臨床診断名は、すべてヘルパンギーナであり、発熱(38.3〜39.5℃)と口内炎がすべての患者にみられた。
No. | 検体採取日 | 年齢・性別 | 発熱(℃) | 症 状 | ||
1 | 4月 9日 | 2歳 女 | 39.0 | 発熱、口内炎 | ||
2 | 4月12日 | 3歳 男 | 39.0 | 発熱、口内炎 | ||
3 | 4月19日 | 1歳 男 | 39.0 | 発熱、口内炎 | ||
4 | 4月23日 | 8歳 男 | 39.5 | 発熱、口内炎 | ||
5 | 5月 2日 | 4歳 男 | 39.0 | 発熱、口内炎 | ||
6 | 5月 5日 | 9歳 女 | 38.3 | 発熱、口内炎 | ||
7 | 5月 6日 | 5歳 男 | 39.3 | 発熱、口内炎 | ||
8 | 5月14日 | 1歳 女 | 38.3 | 発熱、口内炎 |
ヘルパンギーナ患者からのウイルス分離・同定検査は、哺乳マウスに患者検体(咽頭ぬぐい液)を接種し、麻痺の現れたマウスの筋組織からウイルス液を抽出し、感染研から供与された抗体(免疫腹水)を用いて補体結合反応試験により行っている。
ヘルパンギーナの流行の特徴として、主な流行ウイルスが毎年推移していることが挙げられるが、CA3は1982年以降、ヘルパンギーナの主な起因病原体としては報告されておらず、今後注目すべきウイルスであると考えている。
大分県衛生環境研究センター 小野哲郎 小河正雄 塚本伸哉