アデノウイルスによる咽頭結膜熱患者の地域的発生−兵庫県

兵庫県南西部に位置するH市において1997年12月から咽頭結膜熱患者が継続的に発生し、1998年5月までに患者30名中20名(67%)の咽頭からアデノウイルス(Ad)がHEp-2細胞により分離された。同定は中和反応、DNAの制限酵素切断パターンおよびPCR 法により行った。分離ウイルスの種類と株数はAd3型、5型および7型がそれぞれ15、1および2株であり、2株は現在同定中である。Ad3が分離ウイルス20株中15株(75%)を占め、そのDNAをBamHIおよびSmaIで切断して調べたところ、同一のパターンを示し、同時期に分離された7型とは異なっていた。Ad7は1995年8月から分離され始めたが、現在までの分離株数は4株と少なく、BamHIおよびSmaI切断パターンはすべて同一であった(図1)。

H市における咽頭結膜熱患者は当初プールを介して感染したものが、周囲に広がったものと推定される。Ad3分離患者15名の平均年齢は 5.1歳(1〜10歳)で偏りは見られなかったが、男女比は2:1で男子が多かった。発熱は全員に見られ、平均39.5℃(38.6〜40.0℃)であり、1994〜1996年にAd3が分離された患者26名で平均39.5℃(38.1〜41.0℃)の発熱が見られたのと同様であった。結膜炎は15名中14名(93%)に、上気道炎および消化器症状が一部の患者に見られた。15名中4名は兄弟あるいは姉妹間の感染で、いずれも年長児の発病後8日後に年少児が発病していた。Ad7が分離された患者2名の臨床症状は3型のものと差が見られなかった(表1)。

我々は1997年3月に兵庫県南東部の住民100名(9歳以下)についてAd3および7に対する中和抗体保有状況調査を実施した。その結果Ad3に対しては43%、Ad7に対しては4%の抗体保有率であった。Adは比較的限られた集団内で流行する傾向があるので、県内での咽頭結膜熱の流行に注意が必要である。

兵庫県立衛生研究所
藤本嗣人 近平雅嗣 増田邦義
岡藤小児科医院 岡藤輝夫

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