麻疹の流行−群馬県

本県において、麻疹様疾患患者報告数は、1998年第5週より急激に増加し始め、全国平均を大きく上回っている()。本県での第1〜20週までの定点からの患者報告数は 593人であった。患者の大多数は、本県東部地域(桐生、伊勢崎、太田、館林地域)からの報告(529/593、89%)であった。東部地域以外での大きな流行はみられていない。患者年齢層の内訳は、0歳52人(8.8%)、1歳125人(21%)、2歳71人(12%)、3歳45人(7.6%)、4歳57人(9.6%)、5歳55人(9.3%)、6歳47人(7.9%)、7歳34人(5.7%)、8歳24人(4.0%)、9歳12人(2.0%)、10〜14歳60人(10%)、15〜19歳11人(1.9%)であった。0〜5歳までの患者数が全体の過半数(405/593、68%)を占めたが、中学生以上の年齢層にも患者が報告された。当所および県は4月1日に本疾患流行に関する緊急情報を保健所、医師会および学校等関係機関に提供した。

20週までに定点から得られた本疾患患者62人から得られた咽頭ぬぐい液(TS)、フィコール法(比重1.077)で分離した末梢血単核球(PBMCs)を材料(TS単独53人、TS+PBMCs9人)とし、B95a細胞によってウイルス分離を行った結果、27人(44%)から麻疹ウイルス(MV)が分離された。検体が得られた患者の年齢は7カ月〜18歳(平均 5.2歳)で、臨床症状および所見は、発熱(100%)、上気道炎(46/62、74%)、下気道炎(7/62、11%)、発疹(39/62、63%)、胃腸炎(8/62、13%)、口内炎(6/62、9.7%)、結膜炎(3/62、4.8%)、コプリック斑陽性は18%(11/62)であった。また、ワクチン接種歴のある患者は3人(14歳男児、13歳女児、3歳女児)でそのうちの1人(14歳男児)は第3病日の血漿中麻疹IgG抗体が弱陽性で、同病日のPBMCsからMVが分離された。

1990年以降の本疾患の比較的大きな流行は、1991年(定点当たり患者最大数;群馬県2.56、全国1.42)と1993年(同群馬県1.31、全国0.65)にあった。しかし、今回の本県における広域的な流行は、流行地域と隣接する近県(埼玉県、栃木県、茨城県)にはみられていない。本県での患者数は16週から漸減しているが、いまだに定点当たりの患者数が全国平均を大きく上回っており、今後の動向に注意が必要である。

群馬県衛生環境研究所
木村博一 塩原正枝 中村雄策
赤見正行 小林洋平 大月邦夫
群馬県保健福祉部保健予防課
小林良清 辺見春雄
館林厚生病院小児科
茂木洋一 武井克己 小林敏宏
正田医院 正田穂積

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