5月に発生したインフルエンザB型の集団発生−埼玉県

埼玉県における1997/98シーズンのインフルエンザ流行は、11月末の小学校の集団発生から始まり、患者4名からA(H3)型ウイルスが分離された。

その後感染症発生動向調査の報告患者数は全国とほぼ同様の推移を見せ、1998年第5週(2月初旬)にピークとなった後急速に減少した。分離ウイルスは、3月までにA(H3)型221株、B型1株を数えたが、4月以降はウイルスも分離されなくなり、流行がほぼ終息したものと考えていた。ところが5月に入って県北部の1小学校でインフルエンザ様疾患患者の集団発生があり、検査の結果B型インフルエンザウイルスによるものであることが判明したので、概要を報告する。

1998年5月14日(木)に2年生の1クラスで在籍者36人中18人が発熱(38〜39℃)、頭痛等を訴え欠席した。前日および前々日の欠席者はそれぞれ1人であった。翌15日には欠席者が25人に増加したため、16日(土)および18日(月)を学級閉鎖とした。その後当該クラスは回復の傾向が見られたが、18日以降6年生を中心に同様の症状を訴える児童が増加した。

19日(火)に発症児10人から咽頭ぬぐい液を採取し、数種類の培養細胞を用いてウイルス分離を試みたところ、インフルエンザウイルス様の細胞変性をMDCKで6検体に(うち5検体はCaCo-2でも)認めた。他のウイルスを疑う所見は得られなかった。これらの培養上清を抗原としたHI試験では、インフルエンザセンター分与の抗血清B/広東/05/94は約1:10のHI価を示した。B/三重/1/93、A/武漢/359/95、A/北京/262/95抗血清は<1:10であった。またPCR法によってもB型ウイルスのHA遺伝子を検出した。以上の結果から本集団発生はインフルエンザB型によるものと判断した。現在、分離ウイルスの詳細な抗原分析をインフルエンザセンターへ依頼中である。

最近数年、インフルエンザ発生期間の長期化が指摘されており、本県でも昨年5月にB型、一昨年5月にはA(H3)型の集団発生を経験した。今後も慎重に発生動向を監視していく必要がある。

埼玉県衛生研究所
島田慎一 篠原美千代 内田和江 後藤 敦
埼玉県熊谷保健所
金井正巳 吉岡マサ子 浅見訓子 山内拓夫

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