小豆島地区におけるYersinia pseudotuberculosis 5群の散発発生−香川県
1998年3月下旬〜4月上旬にかけ、3例のYersinia pseudotuberculosisの患者発生が確認された。臨床症状は、10歳女児(3月26日採取):発熱38.9℃、発疹、蝶形紅斑、腹痛、11歳女児(3月27日採取):発熱39℃、発疹、蝶形紅斑、上気道炎、8歳男児(4月7日採取):発熱39.8℃、発疹、結節性紅斑、落屑、胃腸炎を主徴としたものであった。11歳女児、8歳男児においては急性腹症の後に急性腎不全を併発したが、現在は回復している。
血清群は、3例とも5群に分類され、PCR法で病原性遺伝子のvirFとinvの保有を確認した。
今回発生した患者3名はいずれも井戸水を使用しており、うち2名の患者宅の井戸水から増菌法で、Y.pseudotuberculosis 5群が分離された。分離株の1例はvirFとinvの両遺伝子保有株で病原性が認められたが、もう1例はinv遺伝子のみの保有で、プラスミド由来のvirF遺伝子は欠損株であった。
また、患者居住地域周辺の井戸水3カ所、河川2カ所の環境調査では、井戸水からY.pseudotuberculosis2群(virF+、inv+)、河川水からY.pseudotuberculosis 5群(virF+、inv+)が各1カ所より検出された。
これまでに県下では、1987年5例、1988年4例、1989年5例分離されているが、それらの血清群は1群1例、2群3例、4群1例、5群9例で、5群が多く検出されている。
香川県衛生研究所
砂原千寿子 藤井康三 三木一男
十川みさ子 山西重機
内海病院小児科 武内 一