エコーウイルス30型による無菌性髄膜炎の流行−佐賀県

1998年4月以降佐賀県内において無菌性髄膜炎の流行がみられ、29名の患者の髄液(19検体)および咽頭ぬぐい液(11検体)から25株のエコーウイルス30型(E30)が分離された(分離率83%)。各月の分離数/検体数は、4月1/1、5月10/14、6月11/12、7月3/3で、E30が分離された患者年齢は、0歳1名、3歳1名、4歳1名、5〜9歳14名、10〜14歳6名、15歳1名であった。また、E30は上気道炎、急性胃腸炎等の患者からも6株が分離された。ウイルス分離にはVero、RD-18S、BGM、HeLaの4種類の細胞を用いた。RD-18SとHeLa、あるいはRD-18Sのみで分離されたものが多く、BGMでも分離されたが、Veroでは分離されなかった。分離株は、エンテロウイルスレファレンスセンター九州支部より分与された抗エンテロウイルスプール血清「EP95」の5と6で中和され、国立感染症研究所より分与された抗E30単味血清で容易に中和された。E30は1989〜1991年に全国的に流行し、佐賀県においても1991年に無菌性髄膜炎患者から同ウイルスが分離されたが、それ以降は今回まで分離されていなかった。1991年の流行では患者発生のピークは7〜8月であったが、今回は5〜6月で、春〜初夏にかけての流行となった。

今回の流行における入院患者の臨床像は以下のとおりであった。調査対象施設は県中央部佐賀地区(4施設、77名)および県西北部唐津地区(1施設、58名)の5施設、135名である。患者の最年少は6生日、最年長は15歳で、平均年齢は佐賀地区6.3歳、唐津地区8.2歳であり、1歳未満は13例で、2例を除き3カ月未満であった。性別では男児97例、女児38例で男児が多く、男女比は佐賀地区2.2、唐津地区3.1であった。臨床症状は平均3日間ほど続く発熱が全例にみられ、項部硬直が佐賀地区で75%、唐津地区で78%出現している。頭痛、嘔吐も高頻度にみられている。なお、経過中に痙攣2例、傾眠傾向1例、脳脊髄炎1例を認めたが、比較的軽症で治癒するものが多く、全例後遺症は認めなかった。

佐賀県衛生研究所
江頭泰子 船津丸貞幸 諏訪與一
佐賀県立病院好生館小児科 太田光博
唐津赤十字病院小児科   日高靖文

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