埼玉県における腸炎ビブリオ食中毒と血清型の最近の動向

冷夏と言われたにもかかわらず、1998年の夏季に埼玉県で発生した腸炎ビブリオ食中毒はここ数年のうちでは多かった。また、患者からは多数の血清型が分離されたが、特定の血清型(K6)に偏りが見られるように思われた。そこで、過去5年間に本県で発生した腸炎ビブリオ食中毒事件における分離菌株のK血清型別をまとめた。

1993年〜1997年までの過去5年間に本県で発生した食中毒事件は合計73件(平均14.6件/年)で、このうち腸炎ビブリオは20件(27%、平均4件/年)であった。これに対して1998年(9月30日現在)の食中毒事件は23件で、13件(57%)が腸炎ビブリオであった。秋季以降は食中毒、特に腸炎ビブリオの発生が減少すると思われるが、今年の腸炎ビブリオ食中毒は過去5年の年間平均発生数と比較して2倍以上となる。

1993年〜1998年9月30日までに141人の食中毒患者から 154株の腸炎ビブリオが分離された。分離株のK血清型を事件別(県外発生を含む)にまとめてに示した。1993年〜1997年までの5年間ではK6の7件(11株)とK8の6件(43株)が多かった。一方、1998年はK6が15件(県内は13件、37株)と過去5年間の合計件数よりも多かった。過去5年間に分離されたK6は1996年の2件(2株)と1997年の5件(9株)で、K8は1993年の2件(23株)と1994年の4件(20株)であった。

以上のことから、埼玉県における腸炎ビブリオ食中毒患者分離株の血清型の最近の動向として、1995年を境にK8に代わってK6が増加していることが示された。

埼玉県衛生研究所
斎藤章暢 大塚佳代子 小野一晃 瀬川由加里 正木宏幸

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