ロタウイルスの経口ワクチン−米国
ロタウイルスの経口ワクチン(RRV-TV:tetravalentrhesus-human reassortant rotavirus vaccine)が、1998年8月31日アメリカ食品医薬品局(FDA)によって認可された。先進工業国においては、このワクチンが下痢性疾患を減らし対費用効果を発揮することは必至である。開発途上国におけるこのワクチンの有効性と経済性については今後の検討が待たれる。
アメリカでは毎年、5歳以下の子どもの270万人がロタウイルスによる下痢症に罹患し、50万人が医師を受診し、5万人が入院している。これらにより発生する総医療費は2億7,400万米ドルにのぼり、社会損失は10億ドルにもなると試算される。
認可された経口ロタワクチンは、アメリカにおける大規模多施設治験によって、ロタウイルス感染による下痢症の49〜68%、重症ロタウイルス下痢症の61〜91%を予防、下痢のための受診を50〜100%減少させる効果がみられた。副作用は軽微な発熱、下痢、嘔吐などがわずかにみられた程度であった。
先進工業諸国においては下痢性疾患はもはや小児の生命を脅かすものではない。アメリカでは年間死亡数が300人で、これは全体のわずか2%である。にもかかわらず、毎年17万件の入院が下痢性疾患により発生し、多大な社会損失をもたらし、入院が必要な下痢性疾患の3分の1はロタウイルス感染症である。米州全土で定期的にワクチン投与が行われた場合、5歳以下の子どもの22万7,000回の診療と9万5,000回の救急室受診、3万4,000件の入院を予防すると換算される。したがって比較的高価な実施費用(1回用量につき10〜30ドル)がかかるにもかかわらず、ワクチンによる免疫プログラムは米国においては経済性が推奨され、おそらく他の先進工業国においても同じ効果が期待できると思われる。
(CDC、EID、4、No.4、1998)