Salmonella Enteritidis集団下痢症:日本初のファージ型18−長野県

長野市内のA病院に入院中の患者らが下痢症状を呈したため、病院で検便を実施したところ入院患者7名からSalmonella Enteritidis(SE)を検出した。

病院から所轄保健所へ原因究明の依頼があり調査を実施した。下痢症状を呈した患者らは、異なった複数の病棟に入院しており、病棟内での暴露による院内感染とは考えにくい状況であった。下痢症状を呈した患者に共通した食事は、8月27日および28日に提供された軟菜食等の特別食に限られていたことから、この2日分の検食の菌検索と特別食を喫食し下痢症状を呈した入院患者(病院で検査した7名を含む)および給食従事者の検便を実施した。その結果、下痢症患者11名、給食従事者1名の便からSEを検出した。また、8月28日朝食に提供された「えの茶和え(茹でキャベツをなめ茸で和えたもの)」および同日昼食の「ゴマ和え(白菜と油揚げ)」からSEを検出した()。

便および検食から検出されたSEについて、プラスミドプロファイル、制限酵素XbaIおよびBlnIを用いてのパルスフィールド電気泳動法(PFGE)による染色体DNAの切断パターンを検討したところ、プラスミドプロファイル、PFGEパターンはすべての株で同一パターンを示した。

検出されたSEの薬剤感受性試験については、用いたすべての薬剤(ABPC、KM、SM、NFLX、OFLX、CPFX、FOM、CP)に高い感受性を示した。

国立感染症研究所にファージ型別を依頼した結果、わが国での集団事例においては初めての18型であった。

以上の結果、病院給食の特別食を原因とするサルモネラによる集団下痢症と断定した。保健所の調査の結果、発生原因として給食施設の器具類または保菌者から食材を汚染したものと推定された。

今回の事例は、病院給食が関与した易感染性宿主の間での発生であった。SE集団発生が老人ホーム、保育所などの福祉施設、学校、病院で多発している国内の事情から、集団給食施設の衛生指導の強化等の必要性を再認識した事例であった。

長野県衛生公害研究所 小山敏枝
長野県長野保健所
北沢栄喜 赤沼益子 岡本 猛 竹下智子
小沼礼子 水庫英喜 小林文範 高木正明
佐藤勝久 横林宗彦

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る